カタルシス

□2.優欲
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静かなその空間に、口付けを交わす音だけが響いている。

サンジが消毒と称して行ったものよりも尚、ナミに注がれているものは優しく、甘いキスだった。

サンジはナミを抱き締めたまま椅子にゆっくりと腰掛けると、膝の上でナミを抱えた。


「ん……」


その間も降り注ぐそれに、壊れそうだったナミの心は次第に落ち着きを取り戻していった。

サンジは一旦唇を離すと、ナミの涙をそっと拭った。

その瞳には愛しさや優しさが溢れているように見える。

ナミは、その瞳にしばらく見つめられると、少々気恥ずかしくなり、つい目を伏せた。


「ナミさんは……綺麗だよ。俺には眩しいくらいだ」

「サンジくん……」


いつもなら軽く受け流す事ができる言葉に、今のナミは大きく心を揺り動かされていた。

しかし、このままサンジの優しさに甘んじる事は許されないだろう。

ナミは、そっとサンジの膝から降りた。


「だいぶ……落ち着いたから。もう部屋で寝るね……」


いつものように、とはいかなかったが、ナミの顔には笑みが広がっていた。


「……眠れるの?」

「……」


その問いに、ナミは直ぐに頷く事ができなかった。

それを見たサンジはすぐに立ち上がり、ナミをお姫様のように抱き上げた。


「きゃっ! ……ちょっと、サンジくん!」

「手を……握っててあげるよ。眠れるまで……」

「え……?」

「うなされてたら、すぐに起こしてあげる」

「サンジくん……」

「なんなら。朝まで抱き締めててあげるよ。……何もしないっていう保障はないけど!」

「……」


にっこり笑ったサンジに、ナミは少し牽制するような眼差しを向ける。


「ははっ! 冗談だよ!」


ナミも、つられてまた笑う事ができた。

あんなに取り乱す姿を見た後でも、サンジが普段通りに接してくれている事が、ナミには一番嬉しかった。







『あっあぁっ! ……んんっんは……あっ! くぅっ……! 』


ナミは何度も唇を噛み締める。

それは、最後のプライドを守る為だった。


『どうした? ナミ……苦しそうだな。』


ナミの中に巨大な凶器を突き立てながら、魚人は笑った。


『ほら、言ってみろ。どうして欲しい? 』

『……。』


しかし、ナミは言わなかった。

それがせめてもの、というか、ぎりぎりの意地だった。


『ふん……そうか。』


魚人はそう言うと、一層激しくナミの中を掻き混ぜた。


『あぁっ! はぁっ……あっあっ! 』


出したくもない声が自分の口をついて溢れてくる。

下腹部から痺れるような快感が何度も這い上がってくる。

自分は今一体どんな顔をしているのだろう。

意識を反らしたくて関係ない事に思いを巡らすが、それは大きく襲う快感の波によって、打ち消されようとしていた。

しかしまさにその大波に飲み込まれそうな瞬間、なぜかそれは突如中断された。


『あ……! 』


アーロンは動く事を止め、代わりにナミの上体を片手で簡単に起こした。


『イキたければ自分で動くんだな。』

『なっ……!? 』

『ほら、もう限界だろうが? 動け。』


アーロンが下から小さく突いただけで、ナミの体は電流が走るような衝撃を受けた。


『くっ……! 』


ナミは体に逆らえず、がくがくと震えながら、小さく動き出した。


『そうだ……うまいぞ! シャーッハッハッハ!! 』


ナミの動きに合わせて、アーロンが下から突き上げてきた。

もうどちらが与えている快感なのかわからなかったが、自分が大きく腰をスライドさせていたのは間違いない。

ナミは自ら腰を動かして、アーロンの上で絶頂を向かえたのだ。
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