カタルシス

□1.溺欲
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『なぁ、ナミ。今日お前んとこの村のヤツが武器を隠し持ってたという話を耳にしたんだが……どうしたらいいと思う? 』


アーロンは伺うような話し方をしてみせるが、勿論それは見せ掛けだけのものだ。

こちらの意見など尊重されるはずがない。

その証拠に、嘲るような笑いを先程から絶えず向けている。


『これは反乱とみなすべきか? その人間を死刑にすればいいか……おっと! 勘違いするなよ? お前が仲間だと思ってるから意見を聞いてんだぜ? シャハハハ……。』


『やめてっ! 村には手を出さない約束でしょ!? 』


ナミは殺意を込めて睨み付けるが、アーロンは毛ほども気にしていない様子だ。


『そうだなぁ……お前が大人しく言うことを聞いていれば、考えない事もないが。』


満面に広がったアーロンの笑みに、ナミはぎりっと奥歯を噛み締めた。


『……どうすればいいの? 』


その問いに、アーロンはナミの髪を掴むと、自分の足元に膝まずかせた。


『とりあえず、咥えてもらおうか。』


眼前に突き出されたのはそそり立つ雄の象徴であった。


『なっ……!? 嫌よっ!! 』


ナミは咄嗟に眉根を寄せ、顔を背けた。

これは既に何度もナミの中に突き立てられていた凶器であり、二度と見たくないおぞましい存在だった。

吐き気さえ覚えるその代物を、咥えるなど、以ての外だ。

体を真っ二つにされるような痛みの記憶が掠め、ナミは無意識に下腹部を撫ぜた。


『まぁ、どちらでも構わん。おい! 村の者をここに連れて来い! 』

『! ……待って! 』


ナミは拳を握り締め、一度目をぎゅっと閉じてから、決意したように開けた。

魚人をこれ以上愉快にさせない為、平然とした態度を取りたい気持ちはあるが、それを掴む手がつい、小さく震えてしまう。

口を開けると、まず最初に唇にそれが触れ、その気味の悪い感触に思わず涙が出そうになる。


『そうだ……。そのまま奥まで咥え込め。』

『……。』


噛み千切ってやろうか、とアーロンを睨みつけるも、それは逆に相手を悦ばせた。


『いい目だ……。俺を殺したいか? ナミ。シャハハハハ! 』

『くっ……! 』


何度も何度も、心だけではなく体がそれを押し戻そうとする。

しかし、止めるわけにはいかなかった。

自分がここで逃げ出せば、愛しい者達の未来は一瞬でなくなるのだ。


『そうだ。もっと舌を使え。』


嘲り、蔑むような魚人達の目。

そして、絶えず耳に届く笑い声。

それらに晒されながらも、ただ耐える事しかできない自分を呪った。

いつか、こいつらを殺す日を夢見る事だけが、唯一自分にとっての悲しい救いとなっていた。


『うまいじゃねぇか。ナミ! 』


次第に質量を増してくるそれを忌々しく思いながらも、もうすぐこの苦しみから解放されるのかと思っていた時だった。

アーロンが他の魚人に向けて、顎で何かを指示したのが見えた。


『! 』


すると、無防備だった下半身にすぐに何かが滑り込んできた。

魚人の一人が、ナミのスカートを巻くり上げ、下着を剥ぎ取ったのだ。


『んんーっ! 』


ナミは叫びもできない状態のままアーロンに目を移すが、愉快で堪らない、という顔を確認するだけとなった。


『気にするな、ご褒美だ。……好きだろ? ナミ。』

『うっ……うぅっ! 』


長い舌が剥き出しになったナミの肉芽へと纏わり付く。

最初はちょろちょろと優しい動きだったそれは、徐々に大胆かつ、ねっとりとしたものへと変わった。


『んん……うっうぅ……。』


下半身の痺れるような感覚は、次第にナミから殺意や羞恥心を剥ぎ取っていった。


『だいぶヨクなってきたな。……今のお前の姿を村の者が見たら、何と言うだろうなぁ? 』

『! 』

『報告してやるべきか? ナミは俺等にこんなにも可愛がってもらっていると。』


再度アーロンを睨みつけようとした時、ナミの下半身に新たなる衝撃が襲った。

どうやら、もう一人の魚人がいきなり後背位から挿入を試みたらしい。


『んんーっ!! 』


それは最初だけ痛みが走ったものの、来る日も来る日も陵辱され続けてきたナミの体はすぐにそれを受け入れた。

執拗に舌を絡めてくる魚人と、無遠慮に突き上げる魚人によって、抗う事も叶わない劣情がナミを支配する。


『んっんんっ! ふっ……う……くぅぅ……! 』

『ほら、口が疎かになってるぜ? 』

『! 』


すっかり目を閉じて成すがままだったナミの口腔を、アーロンが自ら動いて犯しだした。


『うんぅっ! うぅ……! 』


それは何度も喉奥に当たっては嘔気を促すが、同様に後ろからも突き上げられ、ナミは動く事もままならない。

ナミが抵抗できないのを知ると、三人の動きはみるみる激しくなり、今まで経験した事のない快感が子宮を痙攣させる。


『んっ、んっ! ……うぅぅーっ!! 』


ナミは家畜のような姿勢で、口からも膣からもだらだらと液体を流し、いつか殺す事を夢見ている者達の手によって、絶頂に達した。


『見ろっ!! お前は浅ましい女だ! 淫らな女だっ!! シャーハッハッハッ!!!! 』








「……っ!!」


ナミは飛び起きた。

全身には例の如く汗をびっしょりとかいている。

荒くなっている呼吸を落ち着けようと、なんとか口を閉じる。

ふと、口腔に血の味が滲んだ。

どうやら、唇を噛み締めていたらしかった。

いつものようにしばし放心しながら部屋を見回すと、すぐ隣に寝ている男が見えた。

ゾロだ。

心地よさそうな寝息を立てているところを見ると、どうやら起こしてはいないようだ。

ナミは大きく息を吐きながらゾロの体にそっと触れた。

脱力しきっている無邪気なその顔から、未だ胸に残る大きな傷跡に目を移す。


「……」


ナミの心が小さく痛む。

知らなかった事とは言え、この傷がまだ塞がっていない時に、自分はここを思い切り殴りつけたのだ。

ゾロは優しい。

どんなに憎まれ口を叩いていても、仲間に危機が訪れると必ず無条件に救ってくれる。

昨夜の事もそうだ。

ナミは生まれて初めて陵辱される事もなく、尊厳をへし折られる事もなく、男に抱かれた。

それは今まで味わう事ができなかった、心から温かくなるような気持ちであった。



しかし、なぜだろう。

きっと、もうあの夢は見ない、と思っていた。

自分はもう解放されたのだと、信じたかった。

なのに、なぜ。

なぜ執拗なまでに自分を苦しめ続けるのか。

あの男が憎い。

そして、それ以上に、自分が憎い。
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