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□ 5.終わらない夢
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ナミは階段を駆け上っていた。


(見取図を見た時に存在しなかった部屋はきっと最上階……! だから、早く下りなきゃ……って、え!?)


いましがた上っていたはずの階段を、ナミはなぜか駆け下りていた。


「何これ!? ……きゃあっ!!」


階段のつきあたりは四角く開く壁だった。

ナミは必死に壁に手を差し込んだ。

危うく落ちかけた自分の足元に目をやると、

遥か下方に地面が見えた。


「はぁ……冗談でしょ!? ……全然話が違うじゃない!!」


あの設計士の弟子の顔が忌々しく蘇る。

やはり家の各所に罠はあるようだった。

なんとか這い上がり、もう一度階段を上がる
と、先ほどはなかったドアが目に入る。

ナミはそのドアの中に飛び込んだ。


「はぁ……ここは……?」


今まで見てきた部屋とは大きく違う作りだった。

そこには美しい肖像画があり、天蓋がついたベッドもある。


「奥さんの部屋かしら……?」


その時、向かいにあるもう一つのドアが開いた。


「……あら。お客様ね」

「!」


黒い髪を巻いた美しい女だった。


「あんた……? ……!」


その時、痛烈にサンジに抱き締められた記憶が蘇る。


「この香水……」

「ふふ……あなたがナミね……」

(この女……? まさか……)

「あんた……ビショップと関係があるの? だからサンジくんと……?」


そこまで言うと女は満足気に笑み、ナミに拍手を贈る。


「ご名答。さすがね……。あたしはビショップ・ファミリーのデイジー。黒足のサンジは……いい男だったわ」


そう言うと少しうっとりした顔をしてみせる。

その表情にナミはむっとした。


「ふふ……あなたまだサンジと寝てないのね。教えてあげましょうか? 彼がどんな風にあたしを感じさせたか……」

「……」


ナミはクリマ・タクトをチャージすると、溢れそうな電気をばちばちといわせながら近づいた。


「いらないわ……。どうぞ、最後の思い出にとっておいて……!」

「……結構気が短いのね。まぁいいわ。あなたはどうせ……」


その時、ナミの踏みしめた床からカチッという音が聞こえた。


「!」

「ここから先には来れないんだから! あーはっはっは!」


その刹那、部屋の床が半分落ちた。


「きゃあぁぁ〜っ!!」


その床はナミを呑み込むと、また何事もなかったようにゆっくりと口を閉じた。
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