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□ 5.終わらない夢
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ルフィは絢爛豪華な部屋に入ると一度ドアを閉めた。
「よく来たな……ささ、蛇姫様はこちらじゃ」
ニョン婆に導かれた先に目をやると、明らかに不機嫌そうなハンコックが奥に座っていた。
「電伝虫で事情はわかったが……して、結局我らにどうしろと?」
まだ無言のハンコックに代わってニョン婆が説明を求めてきた。
ルフィはいつになく真面目な顔を上げた。
「あぁ……仲間を一人、預かって欲しいんだ」
そう言うとドアを開け、ロビンを部屋に入れた。
「……」
ハンコックの片眉がぴくりと上がる。
(悪魔ニョ子……ニコ・ロビンか)
「あいわかった……だが、我らが島は女ヶ島。もし……男の子が産まれたらそニョ時点で島を出てもらう事になっておる」
ルフィがロビンの顔をちらりと見た。
「……わかったわ。ありがとう……」
ロビンは微笑んでみせた。
「よろしく頼む!」
ルフィは頭を下げ、すぐに部屋を出ていこうとする。
「ルフィ! 待て! おぬしにはまだ聞きたい事がある!」
その時、終始無言だったハンコックが叫んだ。
「あ? なんだ?」
「……じゃあ、先に戻ってるわ……」
出ていくロビンを見送ると、ルフィはドアを閉めた。
ハンコックのただならぬ様子を気にしながらも、ニョン婆も部屋を早々に追い出された。
「なんだよ?」
「子供の父親は誰じゃ……?」
その質問にルフィは真剣な顔つきになった。
「……それは言えねぇ!」
「なぜじゃ!? ……もしや……おぬしが……!?」
ルフィの態度にハンコックはわなわなと震えた。
「おれじゃねぇ! でも父親は言わねぇ!!」
「……!」
頑ななルフィの口調に、ハンコックは半ば冷静さを取り戻した。
「……わかった。して、どうする? すぐにこちらの船に移るか?」
「いや、おれらの船で行くよ。最後まで送ってやりてぇもんな……」
そう言うと、ルフィの表情は影を落とした。
(……やはりいつものルフィと何か違う……)
再度ハンコックに疑惑の念が渦巻く。
だが、ふと見るとルフィが目の前に立っていた。
「はっ……!」
ルフィは近づいただけで顔を赤らめるハンコックを気にもせず、隣にどかっと座った。
「ル、ルフィ……そなた……!」
「あ〜〜……なんか、今日は疲れちまった」
両手を頭上に上げぐぐっと伸びると、うろたえるハンコックに追い討ちをかける如く、そのまま膝に頭を倒す。
「はぁ……! そなた何を……!?」
突然愛する男を膝枕する羽目になり、ハンコックの心臓は早鐘のように高鳴った。
可哀想なくらい動揺しているハンコックを尻目に、ルフィは欠伸をしている。
「柔らけ〜……それになんか……いい匂いだ……」
寝言のようなものをつぶやいたかと思うと、ルフィはそのまま目を閉じてしまった。
「ル、ルフィ! ちょっと……」
先ほどまでの威厳もオーラも消え失せ、そこにはただの恋する乙女が残された。
静かな部屋にルフィの寝息と自分の鼓動だけが聞こえる。
仰け反ってみたり、両手の隙間からルフィをちらりと覗いて赤面したりと忙しい。
(……はっ! ……こ、これが……うわさに聞く…………夫婦の契り!?)
ハンコックの夜は長そうだ。