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□ 5.終わらない夢
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ナミは遠くにそびえ立つ屋敷を見上げながら、一人の男に会いにきていた。
その男はナミを家にあげるとすぐに机に向かった。
「すまねぇな。急ぎの仕事があるんだ」
「いえ……あの、聞きたいことが。……!」
その時、額に入っているものに気が付いた。
「これ……もしかして、あの屋敷の見取図!?」
そう言うと男は驚いて振り向いた。
「なんだ……あんたもあの屋敷に用があんのか?」
そう言われて、ナミも驚いた。
「え? ……もしかして仮面の男が来たの!?」
「仮面? ……いや、来たのは女だったが……。あの屋敷に一体何の用だ?」
ナミは見取図をしばらく眺めていたが、少しおかしな事に気付いた。
「なんかこれ……外観と合わないみたい……」
先程外側から見た実物の屋敷と比べ、何かが足りないような気がした。
「お! あんた鋭いな! 確かにその見取図は未完成……と言うかわざと描かれていない部屋がある」
それを聞いてナミはピンときた。
「まさか……その描かれていない部屋に宝が!?」
男は一瞬目を丸くしたが、すぐに吹き出した。
「はははっ! 宝か! そんな噂もあったがなぁ。……まぁ、その見取図を書いたのは10年も前に死んだおやっさんだからな……。今更確かめようもねぇが」
「え……。住んでた人が宝を隠したんじゃないの?」
そう言うと男は立ち上がり、もう一つ飾られている額を見詰めた。
「いや……住んでたんだ」
その額には家族の写真が入っていた。
「でもそんなカラクリ屋敷……人が住めるの?」
その言葉に男は再度笑った。
「ははっ……いや、住めるよ。なんてったってカラクリがある部屋は一つらしいからね」
なぜそんな部屋を作ったのかは知らないけど、とその男は付け加えるとまた机の方に歩いていった。
「ねぇ! これ借りれない!?」
「いいや。……多分こっちの方がいいだろう……」
男は厳重に錠のかかった箱を取り出すと、鍵を開けた。
「これは……?」
「その部屋の設計図だ。どうぞ、持ってってくれ」
それは飾られている見取図とは全く異なり、細かい線や使う材質などまで記されていた。
「ありがとう……でも、大事なものなんじゃ……」
「あぁ……だから後で教えてくれ。その部屋で見たものを……。何があったのかを」
「……わかった!」
ナミはもう一度お礼を言うと、薄暗い町を駆け出した。