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□ 5.終わらない夢
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ロビンはふと目を覚ました。

まだ体はだるかったが、先程よりはだいぶ気分が良いいようだ。

その時、何か気配を感じて振り向くと、そこには両手を組んでうつむくゾロが座っていた。


「ゾロ……」

「……」


ゾロは動かず、表情を強張らせたまま押し殺したような声を出した。


「俺の……子だな」

「……」


ロビンは何事もないように天井に目をやると、


「言ったでしょ……。これはわたしの子……」


と、穏やかな口調で話し始めた。


「ふふっ……可笑しいでしょ。親を知らないわたしが子供を持つなんて」

「……」

「……でも、この子がお腹にいるとわかってからわたし……何だか心が穏やかになった気がするの……」


そう言うと微笑みながら腹部を撫でた。


「……お前、ポーネグリフは?」


ゾロは少し顔を上げた。

しかし、表情は硬いままだ。


「それは……子供を産んでからでも探せるわ……」


それを聞いた途端、ゾロは再度体を折り曲げた。


「くっ……。すまねぇ……!」

「……ゾロ」


そんなゾロの様子を見つめ、ロビンはなだめるような口調で言った。


「あの時……聞いていたでしょ? わたしの身に何が起きても……あなたは世界一の剣豪になると……」

「!」


ゾロは、あの時電伝虫で聞こえたロビンの話を思い出した。


「ロビン……」

「ふふっ……顔を上げて? ねぇ……一つ頼みがあるんだけど」


そう言うとロビンはいたずらっぽく笑った。









ロビンが眠っている船室にも戻れず、ナミは一人町に来ていた。

まったく飲む気にはならなかったが、行くあてもないので目に留まったBARに入る。

すると、入り口で大きな仮面の男とすれ違った。


(仮面……?)


なんとも異様な雰囲気の男だったが、特に気
に留めず中に入った。

座って一息ついた途端、先ほどのサンジの温もりをふと思い出した。


「……」


はぁっとため息をつこうとしたナミの耳に、隣の客の話が飛び込んできた。


「ははっ! これであの「黒足のサンジ」もおしまいだな!」


ナミは息を飲み込んだ。


「ちょ、ちょっとおじさん! 今の話って?」

「ん〜? あぁ、この町に今ビショップ・ファミリーっつう賞金稼ぎが来ててよ。そいつらが黒足の弱点握ったって話よ!」

(弱点!? ……弱点って……!)

「あいつらはどんな手段でも使うんで有名だからなぁ。目付けられたヤツは……」


ナミは隣の客の話を遮り詰め寄った。


「その話誰から!?」

「……あぁ〜、今出てったなぁ。でけぇ仮面の……」

「! ……ありがと!!」

ナミは店を飛び出した。


どちらに行ったかわからなくとも、小さい町であのように目立つ男はすぐ見つかるはずだ。


「はぁ……いた!!」


その男は路地に入っていく所だった。
すぐに追いかけ、ナミも路地に飛び込んだ。


「!?」


しかし、その男はそこにはいなかった。

奥には壁があり、行き止まりのようだ。

壁の向こうには一際大きな屋敷がそびえ立っているのが見える。


「……俺に何か用か」

「はっ……!」


振り向くとその男はいた。

このような大きな男がなぜ現れたり消えたりできるのだろう。

ナミはその男が一層不気味に感じた。


「……い、いえ」


身の危険を感じ、ゆっくり立ち去ろうとしたが、


「黒足のことか……」

「!」


その男はナミにゆっくりと近づいてきた。
ナミは恐ろしかったが、思い切って聞いてみた。


「あの……弱点って……?」

「なぜだ……知り合いか?」


さらに近寄ってくる男にぶんぶん手を振って否定する。


「……まぁいい。あの男は今夜我らに捕らわれる。愚かな騎士道精神を振りかざしてな!」

(やっぱり……! 女を使うんじゃ……)


その時、その男はずいっとナミに踏み寄った。


「どうする……お前が助けるか? ふっ……」

「!」

(やばい! ……仲間だってバレた?)


ナミはその男の不気味さにしばし動く事を忘れ、息を飲んだ。

だが、男はナミから一度離れると、路地の奥に目を向けた。


「あの屋敷が見えるか……。あれはもう住む人間もおらず何十年も放置されたままのものだ。何故かわかるか?」

「……」


ナミは動かず、目をキョロキョロさせて答える。


「あそこの主人が死ぬ前に仕掛けた罠がびっしりと張り巡らされているからだ。……だから誰も入れない」

「……中に何があるの?」


やっと言葉を出すと、その男が振り向いた。


「宝だよ……時価、7700万ベリーのな」


そう言うと仮面の下の顔がニヤリと笑った。


(それってサンジくんの……!?)

「我らは……どちらでもいい。『泥棒猫』よ……」

「……!」


ナミは再びぞっとした。

やはり最初から自分の事を知っていてこの男は話をしたのだ。


「何を差し出すかは……お前が決めろ」


そう言うと、男は表の道に消えていった。


「……」


ナミは、もう一度屋敷を眺めた。

それは先程よりも一層不気味にそびえているように映った。
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