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□ 5.終わらない夢
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「おいお前、女は?」


フランキーが酒を置きながら聞いた。


「ははっ……まぁ、随分昔の事ですよ……」


二人はもう長い時間一緒に飲んでいる。

しかしお互いなかなか酔えずにいた。


「そういうフランキーさんは?」

「ばぁかっ! お前、一緒にすんな! 俺はまだ現役バリバリよぉ!!」

「……恋人いるんですか?」

「だぁから、それはアレだ! 今からドシドシとな……」

(いないんですね……)


二人の夜は長かった。









「ふぅ……」


ナミは大きな浴槽につかると、心地よさに息が漏れた。

まったく、今日は朝から色んな事があったものだ。


「……ところで、サンジくん」


ナミはさっきから背中にまとわり付いているサンジに振り返った。


「なんだい? ハニー!」

「……」


ナミはサンジの腕をどけると正面に向き直った。


「念の為に言っておくけど、あたしたちの事はまだみんなには内緒ね!」

「えぇ!? なんでだよ! 俺は今、全世界に叫びたいぐらいなのに! 『ナミさんは俺のもんだーっ!!』って!!」


ナミは慌ててサンジにチョップすると、指を一本口の前で立てた。


「ばかっ! 誰かに聞こえたらどうすんのよ!?」


そして、目を伏せると、


「だって……ロビンの事もあるし……。今はあんまりみんなを刺激したくないの」


と、少し寂しげな表情で言った。


「……」


サンジは濡れたナミの髪の毛に手を差し込むと優しく撫ぜた。


「まっ! 俺はどっちでもいいけど? こっそり会うのも『密会』って感じで燃えるよな〜!」


そう言うと、少しだらしない顔をしておどけてみせた。


「ちょっと! 本当にわかってんの!?」

「わかってるって! ひ・み・つ♪だろ! やらし〜!」

「……ちょっとぉ!!」


二人だけしかいない浴場には笑い声が響いていた。









「しかし、あいつらはまだ若いからな」

「えぇ……まさに青春ってヤツですかね。羨ましい限りです」


(ところで……)


ブルックとフランキーは先ほどから同じ事を考えていた。


(ナミさん……サンジさん……)

(お前ら……)



(……丸聞こえだ!!)




大浴場の声は二人の耳にしっかりと届いていた。

いまだキャッキャと騒ぐ声が聞こえる。


「はぁ……寝るか」

「えぇ……そうしましょう」


二人は重い腰を上げ、どこか疲れたように船室へと戻っていった。











ロビンはこの風景を目に焼き付けるように、最後にもう一度振り返った。


「……」

「行くぞ……もう朝になる」


漆黒に染まっていた空がいつの間にかしらじらと明けていた。

ここにいると時間の感覚がなくなりそうだ。

うとうととしていた猿にもう一度礼を言うと、二人は来た道を歩き出した。

もう行く手を阻む者はない。

静かな森がただそこにあるだけだった。


「……ゾロ」

「ふぁ〜……ん?」


ゾロがあくびをしながら振り返った。


「……わたし、今日の事は忘れないわ」


ロビンは、絶対に、と付け加え微笑んだ。


「……あぁ」


ゾロも口元を緩ませた。


「……でも俺はまた来てぇ」

「え?」


ゾロはその表情を見せまいとするかのように前を向いたまま呟いた。


「……三人で……」













ルフィは伸びをして起き上がった。


「ふぁ〜もう朝か……。腹減ったなぁ〜」


すぐに椅子から飛び降りると、


「じゃあおれ船帰っから! また女ヶ島でな!」

「……」


ハンコックからは反応がなかったが、ルフィは構わず出て行った。

その時、どこか遠慮がちにノックする音が扉から聞こえた。


「蛇姫様、もし、蛇姫様〜! 開けますぞ?」


反応がないのを不審に思い、ニョン婆が部屋にそろりと入ってきた。


「!!」


ハンコックは椅子に座ったまま気を失っていた。


「蛇姫様〜!! どうなさったニョじゃ〜!! しっかりしなされ!!」


しかし、なぜか幸せそうに、その頬は紅潮していた。
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