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□ 5.終わらない夢
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奥に行く毎に光る石はその数を増していた。

夜は確実にふけているはずなのに、森の中は次第に明るくなっていくようだ。


「少し休むか?」

「いえ……大丈夫」


ロビンは、さっきよりゆっくり歩いてくれているゾロの背中を見詰めた。

ゾロはあの件以来、常に気を遣ってくれている。

決して表面には出さないが、いつも支えていてくれているような優しさをロビンは常に感じていた。


「……」


いや、と思い直し、ロビンはふと立ち止まる。

あの件より、ずっと前からそうだったかもしれない。

ぶっきらぼうだが、温かい優しさがゾロにはある。

だからこそ、ロビンはゾロの負担にはなりたくなかった。

妊娠しているのがわかった時、自分に謝ってきたゾロの様子が、今でも鮮明に思い出される。


「……」

「どうした?」


立ち止まったままのロビンにゾロが振り返った。


「……女ヶ島に行く事になったわ」

「……」

「辺りはカームベルトで守られ……現皇帝は七武海に加盟している。だから……」


大丈夫、と言おうとして顔を上げると、同じように何か言いたげなゾロと視線が交差した。


「俺は……」


その時、先程とは違う風景に違和感を感じた。


「!」


辺りにあった岩がなぜか近付いている。

いや、気が付くと、二人は岩にぐるりと取り囲まれていた。


「これは……?」


岩のように見えたそれが、突如むくっと顔を上げ、ぎらりとした目を二人に向けてきた。


「ちっ……行くぞ!」


サイのような恐竜のようなそれが一斉に襲いかかろうとした時、ゾロは前方の二頭を斬りつけ道を開くと、ロビンの腕をつかみ駆け出した。


「!」


しかし、すぐに道は塞がれた。

先程襲ってきたおびただしい数の植物がいつの間にか回り込んでいたのだ。


「なんなんだこいつら……」


後方からも先程の岩の化け物が押し寄せてくる。


「く……!」


ロビンは力が使えないもどかしさを嫌というほど感じていた。

その時、地響きと共に大きな影が二人を包む。


「今度はなんだ!?」


猿だ。

普通の人間の五倍はあろうかという巨大な猿が歯をぎらつかせ、敵意を剥き出しにしている。


「!?」

「こいつがラスボスかよ……!」


その時、大猿が一声鳴いた。

すると、それが合図だったかのように植物が一斉にロビンを襲う。


「はっ……!」


思わず目を閉じ身を硬くするが、ゾロがロビンを抱えながら素早く斬りつけた。


「下がってろ!」


だが、その場にロビンを置いた一瞬の隙に岩の塊がゾロに飛び掛ってくる。


「うおっ!」


四方八方から逃げ場無く押し潰され、ゾロの口元から血が噴出した。


「ゾロ!」

「ぐ……!」

(なぜわたし達を執拗に襲ってくるの!?)


その時、ロビンは大猿の後方がやたら明るくなっていることに気付いた。


(あれを守ってる……?)


しかし、大猿は気を取られたロビンを見逃さず、体をわしづかみにすると、簡単に持ち上げた。


「あ……!」

「!!」


軽く締め上げられただけで、生身であるロビンの体はすぐに悲鳴を上げる。


「……う!」

「てめっ……!」


そして、よそ見をすることを許さないように無数の植物のつるがゾロの足に巻きついた。


(しまった……!)


それは一気にゾロの首の辺りまで巻き上げる。

そして、畳み掛けるように岩の化け物が再び襲い掛かって来るのが見えた。


「……!」


その時、苦しそうなロビンをまじまじと見ていた大猿が突如、大きく吠えた。

大猿の雄たけびが辺りに響き渡り、その場にいるもの全ての動きはぴたりと止まる。


「!?」


大猿は再度ロビンにゆっくり顔を寄せると、今度は鼻をひくつかせ、手の力を緩めた。

ゾロに巻きついたつるもゆっくり解けていく。


「なんだ……?」


大猿はロビンをそっと地面に下ろすと、奥に進んで振り返り、いざなうように一声鳴いた。


「……?」

「来いっつってるみたいだが……」


今まで道を塞いでいた者がさっと退いて道は開け、二人は一度顔を見合わせてから慎重に歩を進めた。

奥は一際明るく、木の陰から光が漏れ出すほどだった。

そこまで来ると、大猿は光の漏れる大きな木の一つから、取り出したとても小さなリュックをロビンに手渡してきた。


「……これは?」


ロビンの手にも小さいそれはかなり古く、ボロボロだった。

リュックを壊さないように慎重に開け、中にそっと手を入れてみる。


「!」


中からは紙切れが二枚、写真が一枚入っていた。

その写真には十数名の人間と、肩に乗っている小さな猿が映っている。

しかし、ロビンの目は一人の人物に釘付けになった。

今の自分の姿と見紛う女性。

その時、ロビンは懐かしさと愛しさで胸が締め付けられた。



「……お母……さん……」
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