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□ 5.終わらない夢
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森の中には所々光る石があり、薄暗くなってもほのかな明るさを保っていた。


(この石は……何かの道標みたいだわ)


しかし、ロビンがその石を見詰めている隙に、ゾロはまったく見当違いの方向に進んでいた。


「ゾロ! こっちよ!」

「あ? あぁ……」

「逆よ!」

「あ……?」

「こっちよ!」

「……」

「ゾロ!」


何度も歩みを止められ、ゾロは焦れたように叫ぶ。


「いいじゃねぇか、どっちでも! 道は決まってねぇんだろ?」

「でも……そっちは来た方角よ。それじゃ町に戻ってしまうわ……」

「……!」


ゾロは一度舌打ちしたものの、大人しくロビンの傍にきた。

ロビンはそんなゾロが可笑しくてつい笑みがこぼれてしまう。


「大体なんで俺がついてこなきゃなんねーんだよ!? 俺は歴史なんかに興味ねぇぞ! まったく、一人で来れるだろうが……」


しばらくぶつぶつ文句を言うがロビンからの反応はない。

またはぐれたか、しょうがねえな。

と思って振り向いたゾロの目に、信じられないものが映る。



巨大な緑色の、植物だろうか。

その長く太いつるはロビンの胸部から口元にわたって巻き付いていた。

遥か上空に吊り上げられ、ロビンは苦痛に顔を歪めている。


「……う……!」

「な……! なんだこりゃ……!」


花の部分はパックリと口を開け、今にもロビンを飲み込もうとしているように見えた。

ゾロは素早く刀を抜くと、花の部分を真っ二つにしながら、ロビンに巻き付いている部分は丁寧な細切れにした。

目の前に降り注がれる植物の残骸の中から、解放されたロビンを抱きとめると、そのままそっと地面に下ろす。


「大丈夫か?」

「えぇ……。ありがとう、ゾロ……」


その時、後ろから同じ植物がざわざわと動くのが見えた。

仲間だろうか。

一体どれだけいるのかわからない。


「……おい! とにかくここから離れるぞ!」


まだ苦しそうなロビンを片手で抱くと、ゾロは駆け出した。





「はぁ……もう追ってはこねぇか」

「はぁ……はぁ……」


ロビンはまだ苦しそうだ。


「おい……お前やっぱり体が……」


ロビンは心配そうに覗き込んでくるゾロに微笑んでみせると、


「さっきの質問に答えるわ……」


と言い、立ち上がった。


「実は少し前から……力がうまく使えないの……」

「!? ……なんでだ?」

「さぁわからない。でも……この子のせいかしらね?」


ロビンはそう言うと愛おしそうに腹部に手を添える。


「!」


ゾロは一度目を見開いてから伏せた。


「そうか……」

「だから一人で来るのは不安だったの……ごめんなさい」

「いや……」


二人はまた歩き出した。

だいぶ森の奥まで入ってきたようだ。相変わらず光る石は点々と続いていた。


「で? ここには何があんだ?」


ゾロは光る石を横目で見ながら、さして興味もなさそうに聞くと、


「……わからない」

「あ?」


ロビンは一度立ち止まり、少し考えながら静かに語り始めた。


「わたしは今まで色んな海賊船を渡り歩いてきた……」

「……」

「ある海賊船にいる時、偶然見た航海日誌の中に……オハラの学者について書かれている所があったの」

「! それってお前……」

「えぇ……でもそれには、この辺りで船を見た事しか書かれていなかった……」


ロビンは森の奥を見ながらふっと笑った。


「何も……ないのかもしれないわ」

「……」


ゾロは再び歩き出し、


「じゃあ、行くぞ」

「え?」

「何もないのか、あるのか、見てみりゃいいだろうが」


息を一つ落とすと、面倒臭そうに言った。

そして、少し真面目な声で付け加えた。


「俺から……離れんな」
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