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□ 5.終わらない夢
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その頃ナミは地下にいた。
先程手に入れた見取図は、前に見たものよりもかなり新しかった。
恐らく、誰かがこの屋敷に新たに手を加えたに違いない。
「これによると……ここだわ!」
ナミは本棚を動かした。
すると、隠されていたエレベーターが現れた。
早速乗り込んで一つしかないボタンを押す。
上がってるのか下がってるのかわからなかったが、ちんという音がし、ナミはごくりと唾を飲み込んだ。
ドアが開いて出てみると、その部屋はなんとも小さく、壁紙には可愛らしい動物の絵が並んでいる。
どうやらここは子供部屋のようだ。
ナミは写真で見た家族を思い出していた。
写っていたのは確か小さな男の子だったはずだ。
「きっとあの子の部屋なのね……」
机や椅子もある。
そして、一つの箱にオモチャが乱雑に入れられていた。
ナミはその中の一つに家の形をしたオモチャが入っている事に気付く。
木で作られた家のようだ。
きっと子供が作った物だろうと思った。
壁には子供が書いた絵などが貼られている。
「……」
それらを眺めていると、ふと壁紙の継ぎ目が不自然なのに気が付いた。
・
仮面の男は屋敷の中の、数ある部屋の中の一つにきた。
そこは広く、家具や窓などは一切ない。
薄暗いその部屋には豪華な椅子だけがあり、その雰囲気はまるで懺悔室のようだ。
その椅子に腰掛けようとした時、
「初めてじゃないみたいね……その椅子に座るのは」
「!?」
その声の主は暗がりから突如現れた。
「その椅子、もしかしてあなたの?」
ナミだ。
不意をつかれて驚いている男に構わずにやりと笑っている。
「泥棒猫……ここにいると言うことは……」
「……」
ナミは返事をするかわりに、男に一枚の紙を差し出した。
「まず……お目当ての物はこれね?」
それはこの屋敷の完全な設計図であった。
「!」
「有名な建築家だったのね……。確かに時価7700万ベリーはくだらないかも」
「……これをどこで?」
ナミはふふんと得意気な顔をしてみせると、もう一つの物を差し出した。
「これよ」
それは木製の鍵であった。
「……」
「……ピンときてないみたいね。これはオモチャ箱の中にあったの。家の模型と一緒にね!」
「!」
それを聞いて仮面の下の顔が強張る。
「思い出した? ……壁紙の継ぎ目に鍵穴があったのは知ってるわよね。その鍵はそのオモチャの鍵だったのよ!」
「……」
男は何も言わずその鍵を見つめていた。
「ここの主人は自分の子供……つまり、あなたにその設計図を託したのよ!」
「!」
動揺する男を尻目に、ナミは一枚の写真を差し出した。
「それ……あなたなんでしょ?」
「なぜわかった……」
「だってお弟子さんが言ってたわよ。取り壊す話が出た途端あなた達が住み出して手をつけられなくなったって。……罠だらけのカラクリ屋敷を誰が根城にしようと思う?」
「……」
「それに、これ」
ナミは新しい方の見取図を見せた。
「これはあなたが書いたんでしょ? きっと、この屋敷に戻ってきてから……。だからあなた達は屋敷内を自由に動けるのね」
しばらく押し黙っていた男は重い口を開いた。
「……全て、お前の言う通りだ」
「どうして賞金稼ぎになんか……」
「俺の話はいい……お前の物を返そう」
ナミの質問を制し、男が椅子のスイッチを押すと、壁一面にあったカーテンが一斉に開き、屋敷内の全てのモニターが顔を出した。
「これは……モニター? あ!」
数あるモニターの中に、サンジとデイジーの姿を発見した。
が、驚いたのはナミだけではなかった。
「デイジー!? なぜ……」