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□4.はじまりは突然に
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その時、一つの黒い点が見えたかと思うと、それは次第に形を成していった。


「お……おいおい」

「ちょ、ちょっと待てぇーっ!!」


4人の頭上にものすごい速さで船が迫ってきた。


「きゃあぁぁーっ!!」

「危ない……!」


腹に響くような重低音を轟かせ、巨大なそれは、4人の輪の中に無理矢理割って入ってくる。


「おー! お前らぁ! いや〜、意外と近かったよな!!」


ルフィがいつもの調子で、ひょいと顔を出した。

それはサウザンド・サニー号だった。


「ルフィ……」

「お前は、殺す気かぁーっ!!!!」


続いて、フランキーが顔を出す。


「だから言っただろうが……まぁ、嵐からはうまく逃れたみてぇだが……」


スパンダムの作り出した嵐は、船の周辺だけのものであった。

どうやら、灯台を目指してクード・バーストしたようだ。

しかし、みんな無事なようだった。

その時ナミの頭にアーロンの言葉がよぎる。


「! ……そう言えば……魚人に襲われなかった!?」

「あぁ。それって……こいつらのことか?」


ウソップの示した方を見ると、気を失った魚人が3人ほど縛られている。


「いや〜参ったよなぁ! 嵐でどうにもなんねぇとこ、こいつらは襲ってくるしさぁ……」

「わたし……危うく海に落とされるとこでした……」

「まったく危なかったよなぁ〜! ははっ!」

「……」


ルフィが言うとどんなことでも笑い話になるみたいだと、ナミは思った。

なんだか懐かしい感じすら覚えながら、4人は船へと乗り込んだ。

それほど、今日という日は長かった。

その時気が抜けたのか、ナミは足元が少しふらついた。


「おっと……」


咄嗟に支えてくれたサンジと目が合う。


「っ……!」


だがナミはすぐ目をそらすと、手を振り払い、逃げるように船内へ入った。


「……」

「誰も怪我してねぇか? ……! お、おい! サンジ〜! どうしたぁ!?」


船に乗り込んだ瞬間、サンジは生きる気力を失ったようにガックリと膝をついていた。


「チョッパー……、俺をエラ呼吸できるようにしてくれ……。そしたら俺は……海から一生上がってこねぇ……」

「お〜い! サンジがいつもに増しておかしいぞ……!」

「んなもん放っとけ」

「な・ん・だ・と? こらぁっ!」

「サンジ〜! 腹減った! 飯ぃ〜!!」


いつもの喧騒が飛び交う。

まるで今日あった事が夢だったかのようだ。

ロビンは息をゆっくり吸い込んだ。


「ロビン! 怪我したのか〜? ここんとこ、赤くなってるぞ?」


少し心配そうに胸元のそれを指摘するチョッパーに、ロビンはすぐに微笑むと、


「これは……怪我じゃないわ。ふふっ……ありがとう!」


と言って船室に向かった。


「?」


今日の事は夢じゃない。

ロビンはあらためてそう思った。







1thEND





5.終わらない夢


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