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□2.ゾロ×ロビン
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思いもよらない言葉にゾロは絶句した。


「な……」

「……」


ロビンはまっすぐゾロを見つめたままだ。


「お前……! 自分が何言ってるか……」

「わたしは、このままじゃ一歩も進めない……!!」


動揺しているゾロとは対照的に、ロビンの態度は揺るがなかった。


「……」


ゾロは困惑しながらも小さく息を吐くと、少し冷静さを取り戻した。


「……なんで俺なんだよ。こんな事はあのラブコックにでも頼めばいいだろうが……」


ロビンから視線を外し、呆れたようにもう一度ため息をつく。


「……ここにはあなたしかいない……! だから今日、わたしを抱いたのは、あなたなの……!」


ロビンは本当にそれが現実なんだ、と思いたかった。


「!」


ロビンはもう一度ゾロにしがみつく。


「お願いゾロ……」

「…………」


ゾロは、小さく震える肩を見つめながら、あの時電伝虫から聞こえた会話を思い出していた。

スパンダムが自分の夢を馬鹿にした時、ロビンは自身の危険もかえりみず、夢は叶うと言ってくれた。

その後通信は切れたが、恐らく酷い目にあったのだろう。

今のロビンの姿がそれを物語っている。

ゾロは大きく息をつくと、ロビンの体にそっと腕をまわした。

そしてそのまま抱き締める。


「!」

「悔いは、ないな……?」

「……えぇ」


ゾロは刀を置くと、ロビンを支え、ゆっくりとベッドに倒した。

切れた口元、引き裂かれた衣服をあらためて見る。


「……」


ロビンは無言のまま見つめるゾロには気付かなかった。

目をぎゅっと閉じ、体を硬くしていたからだ。

ゾロにはああ言ったものの、今はまだ男が怖かった。

ゾロは、ロビンの肌にそっと唇を這わした。

ロビンは目を閉じたまま小さく反応する。


「っ……」


だが、しばらくすると薄っすらと目を開け、ゾロの方に視線を落とした。

胸元には変わらぬ赤い跡がついているようだ。

しかし、それはよく見ると、すべて上から塗り替えられていた。

スパンダムの跡はすべて、ゾロの跡に変わっていた。


「!」


ゾロは、まるでロビンの記憶を塗り替えるように、無理やり上から消したのだ。

ゾロは視線を伏せたまま、唇を離して静かに言った。


「今日お前を抱いたのは…………俺、なんだろ?」

「…………っ」


ロビンの目からはまた涙が溢れたが、もう震えは止まっていた。

ゾロはロビンを見つめた。

それは優しく、いたわるような視線だった。


「ゾロ……」


ロビンはゾロの頬に触れ、二人はゆっくりと唇を重ねた。
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