Butterfly

□After-After
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あれから半年程が過ぎただろうか。

あの女は新世界に身を潜ませている筈だが、しばらく大きな動きは見せていない。



もう既に死んだのか。

いや、こちらに情報があがってこないだけかもしれない。

あれは、必ず私が捕らえる。

ベアトリー・レイン。

あの女は、危険だ。


「ヒナ嬢……もうすぐですね」

「えぇ。私達が海軍といえど、何が起こるかわからない……。気を引き締めていきましょう!」

「はい!」


半年程前、スモ―カ―の部隊にその女は一般人として潜り込んでいた。

水難事故で消息不明となったが、その後も新世界の各地で目撃されている。

赤髪と共にいたというのが最後の情報だったが、その先はさっぱりだった。


「大佐、スモ―カ―大佐からお電話です!」

「……」


あの女を追っているのは自分だけではない。

彼も、執拗に捜し回っている一人だ。

自分の部隊から逃がしたのだからしょうがない。

しかし、理由はそれだけだろうか。



ヒナは受話器を受け取った。



「ヒナ……新世界に来るのか?」

「えぇ。……それが?」

「来るのは勝手だが、あの女は俺が捕らえる。邪魔はすんなよ」

「……」



受話器からは不通話音が聞こえる。

いつもの事だが一方的だ。

ヒナは小さく息をつくと、傍にいる部下に言った。


「……スモ―カ―君の部隊を追跡して」










「はぁ……撒いたか。まったくしつこい奴等だ」


レインは木陰に腰を下ろすと、大きく息をついた。

相変わらず色んな輩に命を狙われる日々が続いていたが、どうやら一人で戦うのも逃げるのも上達したような気がする。

その証拠に、体には怪我一つない。

しかし、ここまで執拗に狙われる訳はわかっていた。

自分が、一人だからだ。



レインはどこの海賊団にも属さず、かといってミホ―クほどの腕や名声があるわけでもない。

女一人でこの海にいる事は、まさにじっと殺されるのを待ってるようなものだ。

しかし、以前とは違い、死というものに抵抗無く身を任せる事はなくなった。

かといって、特別死にたくないとも思わずほどよく力が抜けた状態で日々を過ごしていた。

レインは、こんな生活が気に入りつつあった。


「……」


レインはポケットに忍ばせている紙を取り出した。

そろそろかもしれない。

動き出す時がきたのだ。

レインは立ち上がると、海を目指し歩き出した。







森を抜けると、下の方に海が見える。

しかしそこには、海軍の軍艦が停泊していた。


(次は海軍か……)


レインは溜め息を落とすと、逆の方向へと歩き出した。


「やはり、生きていたか……」

「!」


目の前が白く覆われたと思った瞬間、それはすぐに人の形となってレインの行く手を塞いだ。


「スモ―カ―……」
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