Butterfly

□After-4
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「動かないな……」

「死んでるの?」

「いや……微かだが息は……」


その時、ずっと閉じていた瞳が薄く開いた。


「!?」

「……う……」

「うわぁっ!」


死んだように動かなかった女が突如起き上がろうとしたので、周りにいた男達は慌てて飛び退いた。


「あ、あんた! 大丈夫かっ!?」

「ここ、は……?」

「……ここは、フ―ドヴァルテンっていう……」

「新世界かっ!?」

「え? あぁ……もちろんだよ!」

「そうか……」


それだけ聞くと、女はまた倒れ、目を閉じた。




次に目が覚めた時は、民家の中だった。

なんだか全身が痛い。

あの嵐でだいぶ流されたのではないだろうか。


(まぁ、命があっただけでも拾いもんだな……)


しかし、新世界といえども広い。

レインは、一体どこをどう行けばいいのか見当もつかなかった。


「あ、あんた、目が覚めたのか」

「あぁ……。面倒かけたな」

「で、何があったんだ?」


男は、レインが嵐に襲われた事を聞くと、驚いた。


「そりゃあんた、だいぶ流されたな! この辺りに嵐は来ない」

「……そうか。まいったな」


レインが身を起こすと、民家の窓から見えるものの一つに目が止まった。


「なぁ……あの旗は?」

「え? ……あんた、知らないのか? この島はあの、『白ひげ海賊団』の縄張りだ」

「!」

「昔は色んな海賊が好き放題暴れていたんだが、白ひげの縄張りになったお陰で、この島に手ぇ出す輩はすっかりいなくなった。本当に……すごい人だよ。あの人は!」

「……白ひげがこの島に立ち寄る事はあるのか?」

「あぁ……いや。ほとんどないな。もし来るとしたら、この島に危機が訪れた時だけだろう」

「……そうか」


レインはベッドから下りると、徐に剣を抜いた。


「あ? あんた、一体何を……!?」

「悪いが……呼んでもらおうか。その白ひげ海賊団を」

「はぁ? ちょ、ちょっと……誰か、誰か来てくれ! この女おかしいぞ!!」


民家から変な声を聞きつけ、その島の住人達は集まった。

するとドアが勢いよく開き、その家の主と、先ほどまで気を失っていたはずの女が出てきた。


「え!?」

「きゃあっ!」

「白ひげ海賊団を呼べ!! 会いたがっている女がいると!!」


レインは、男の喉元に剣を光らせながら叫んでいた。
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