Butterfly

□1.終わりの始まり
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「お〜! 城が見えるぜ〜!」


いつもの様にウソップが望遠鏡を覗いている。


「今度は大きい町みたいね!」


ナミも目を輝かせている。

みんなそれぞれ上陸後の事で頭が一杯といった感じだ。

港に船を寄せ碇を下ろす。

美しい町並みの先には巨大な城がそびえ立っているのが見えた。


「でも何か……静かすぎないか?」


サンジは眉をひそめた。

住人の姿はない。

港には一隻の船が泊まっているのみだ。


「まぁ行ってみようぜ〜! おれが一番乗りっと!」


ルフィが飛び降りた。


「あ! ルフィずるいぞ! 俺も行く〜!!」


チョッパ―、ウソップが続く。

他のメンバ―もそれに続き船を降りた。


「確かに、人の気配がねぇな……」


ゾロは辺りを見回し、閑散とした町なかに疑念を抱いた。

ふと見上げると、城から一筋の狼煙が上がるのが見えた。


「おい……」


その時、城から閃光がほとばしる。


「!!」


凄まじい轟音と共に目の前の城は突如爆発し、唸る地響きが一味の足元を揺らす。


「きゃあぁっ!」

「なんだ!?」


その爆風は町並みの間を縫い、灼熱の風となって襲い掛かってきた。


「うわっ!」

「あちちちっ!!」


城は一気に炎に包まれ、誇らしげに町を見下ろしていた巨大な塔は無残にも崩れ落ちた。


「……」


一瞬の出来事に全員が息を呑んだまま動けなかった。

城の炎は瞬く間に勢力を増し、天まで昇りつめると、瓦礫と共に民家に燃え移った。


「まずいわ……! みんな、船に戻って!!」


ナミの一声に我に帰ると、皆一斉に船へと駆け出した。

美しかった町並みは真っ赤に染まり熱気と濃煙に包まれた。


(何が起こったんだ!? 一体………)


ゾロは、皆を先に船に乗せて一度振り返ると、火の海と化した町の中に揺らめく人影を見た。


「!」

「……おい!! ゾロ!」


炎に飛び込もうとするゾロをサンジが慌てて止める。

しかし二人はその人物を見て、金縛りにかかったように動けなくなった。



女だった。



全身赤く見えるのは炎のせいではなく、滴る血液だ。

その女は頭からどっぷりと血を被っていた。

手に携えた剣の切っ先は地面をえぐり、夢遊病者のような不確かな足取りで炎を背に歩む姿はまるで、地獄から引きずり出された魔物のようであった。


「……!」


その時、その女はがっくりと膝を付き、纏った血を辺りに撒き散らした。

二人は 考えるより先に飛び出した。


「おい! ゾロ! サンジィ!!」


叫ぶルフィの声を背に受けながら、女の体に触れようとした瞬間、サンジの眼前に鋭い切っ先が突き出された。


「!」

「……くっ……まだ……いたか……」


がくがくと膝を震わせ、口を利くのもやっとという感じにも関わらず、女は炎の映るぎらりとした目でサンジを見据え、突き出した剣には一切のぶれもない。


(なんで……こんな目ができるんだ……)

「おい……!」


その瞳に吸い込まれ、見詰めたまま動かないサンジの肩をゾロが掴もうとした時、燃え上がった目の前の民家が崩れた。

と同時に、サンジの足元に女がぐしゃりと倒れる。


「行くぞ!」


ゾロが片手で女を抱えた。


「……おぉ!」


サンジは女の手から滑り落ちた剣を拾うと一気に船へと駆け出した。
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