desire

□3.ゾロ×ロビン
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ドレッサーに海図を広げ、ペンを握ったまま眠るナミに、わたしは毛布をそっとかけた。最近ナミはいつもこうだ。測量室に行く時間も惜しいのだろうか。何か飲み物を取りに行こうと部屋を出る。船内にいつもの賑やかさはなかった。今日町で買った本に夢中になり、どうやら夜はかなり更けていたようだ。アクアリウムバーの扉を開けると、てっきり誰もいないと思われたそこに誰かが座っているのが見える。


「あら……。珍しいのね」


それはゾロだった。酒瓶の数からすると、しばらくここで飲んでるようだ。ゾロはこちらに一度目を向けただけで、何も言わずにまたグラスを傾けた。そんなゾロの様子をしばらく見詰め、少し笑いが込み上げた。なんとなくだけど、彼とナミの間に何かあったのかは薄々感付いている。


「……なんだ? 用が済んだら行け」


ただ見詰めているだけのこちらに対して、ゾロは苛立ちを隠せないようだった。


「イライラしてるのね……。失恋でもした?」


意地悪だった自覚はある。わたしはいつもの笑みを浮かべたままゆっくりとゾロに近付いた。


「……鬱陶しいぞ」


ゾロは相変わらず前を向いたまま、不機嫌に答える。随分とわかりやすい反応だ。わたしは少し面白くなってきて、さらに距離を縮めた。ゾロが傍にいるわたしに構わず酒を注ごうとした時、瓶を持つ手の横に腰掛けてみる。短いスカートから覗く脚を見せつけた時、ようやくゾロがわたしの方をまともに見た。


「慰めてあげましょうか……?」


顔を覗き込んでそう言ってみたが、ゾロは何も動じてないような顔付きだ。こういうところがいいな、と思う。年のわりに、ゾロは何に対しても冷静に対処できるような男だった。だけど、たまに見せる子供のような反応も悪くない。それが見たくて、わたしは今のような事をしてしまうのかもしれない。

ゾロはわたしの問いには答えず、前を見据えたまま酒を注ぎ、一気にそれを飲み干した。てっきりそのまま立ち去るのかと思ったけれど、グラスを置くなり、もう片方の手でわたしの腕を手荒に掴んでくる。


「あ、」


そして、乱暴にテーブルに押し倒すと、そのまま馬乗りになり、一気に襟元を引きちぎった。


「あ……!」

「慰めてくれんだろ?」


ゾロはわたしを見下ろしながら勝ち誇ったような笑みを浮かべている。わたしは破れた服を見て大きくため息をついた。なんて乱暴な男だろう。これは少し、教育が必要だわ。わたしは、胸の前で手を交差させると能力を展開した。


「……あ?」


まさか、そう来るとは思っていなかったのか、ゾロは自分の身体に生えた幾多の手を見て驚いていた。そのまま身体の自由を奪い、ゾロを逆にテーブルに叩きつける。


「うおっ!」


毒気を抜かれたような表情のゾロを見下ろすと、わたしの気分は少し晴れた。がっちりと拘束したまま、悠々と上に跨る。


「リードはわたしよ? ふふっ……」

「痛てェ! 何すん……!」


言い終わるのを待たずに、わたしはゾロの胸ぐらをつかみ、思い切りシャツを引き裂いた。


「な、……」

「これでおそろいね?」


わたしが満足げに笑うと、ゾロは言葉を引っ込めた。


「ほんと……酷い事するわ。女に乱暴するなって教わらなかったのかしら?」


言いながら、能力で押さえつけたままのゾロを、品定めするように見下ろした。ゾロは何かを嚙み殺しているような表情だ。いつも強くて逞しい彼を能力で抑えつけているのは、なんだか、ぞくぞくする。何も甘いものを感じさせない空気のまま、ゆっくりと顔を寄せ、ゾロに口づけた。


「女が自分の思い通りになると思ってるんでしょ……?」


ゾロは何も言わない。本気で抵抗すれば、きっとわたしの能力なんかで縛っておけないだろう。、この状況に少し戸惑っているのか、抵抗するのが面倒なのか。わからないが、ゾロの従順さが、わたしの気分を良くさせていた。昼間とは打って変わった静寂な空間に、しばし唇を交わす音だけが響く。


「……悔しい?」


その質問には、ゾロは僅かに反応した。わたしの真意を確かめるように、強い目が射抜いて来る。わたしは笑みを崩さず、ゾロの肌に舌を這わした。


「サンジに取られたんでしょう……?」

「っ、……」


ほんの僅か。息を飲むような気配を感じて、わたしは笑いを堪えられなくなった。表情だけ見ていてもわからない。だけど、ゾロはわたしから視線を外していた。この冷めたような瞳に自分を映したい。強烈にそう思った。

破れた服を脱ぎ捨て、ゾロに見せつけるように身体を晒す。薄暗い照明が自分を大胆にしていた。下腹部に手を滑らすと、そこは顕著な反応を見せている。相変わらず表情にはおくびも出さない。そういうところが、自分の興奮を後押ししている。

まだ自由を奪ったままのゾロの上に、わたしは跨った。挿入する時まで、ゾロは目立った反応を見せない。だけど、その目はもう、わたしから逸らされてはいなかった。じっと見詰められると、なんだか胸が熱くなる。わたしは身体を激しく上下させながら、笑った。


「わたしは……思い通りにならないわ……」









「……ん……」


ドアの開閉音であたしは目を覚ました。どうやらまたドレッサーの上で寝てしまったらしい。最近、みんなの目を盗んではサンジくんと会っているので、寝不足なのかもしれない。


「あれ? ロビン……どこか行ってたの?」

「……ごめんなさい。起こしたわね」


帰ってくるなり、ロビンはベッドに入った。


「……はァ……あたしも寝よっと」


ロビンがどこかに行っていたのは特別気にせず、あたしもそのままベッドに潜り込む。とにかく、眠かった。

そう。あたしは眠かったのだ。単純に部屋が暗かったせいもある。だから、気付かなかった。ロビンの服が破れていた事なんて。
 

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