desire

□1.ゾロ×ナミ
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今夜も星が綺麗だ。空に瞬くそれが少しでも近づいてこないかと、あたしは大きく息を吸い込んだ。みんなはもう寝てしまったのか、昼間の喧騒が嘘のように静かだ。いつもの陽気な雰囲気も好きだけど、静かに寄せる波の音だけが響くこんな静寂も悪くない。あたしはなんとなく船室には戻らず、展望室を見上げた。最低限の明かりが灯された船内とは対照的に、そこだけは確かな明るさを放っている。


「5012、5013、5014……」


マストを登ると次第にはっきりと聞こえてくる膨大な数のカウント。わかってはいたけど、今日もあの男はここにいる。この部屋は、ゾロ以外のものが使う事は滅多にない。


「……まだやってるの? 毎日飽きないわねェ」

「ナミか……。なんか用か」


手の動きは止めず、ゾロはいつものようにぶっきらぼうに答えた。この男はいつもそうだ。甘さや優しさなんかとはかけ離れてるし、誰に対しても態度を変える事はない。


「別に……。みんなもう寝たみたいだから……あんたも早く寝ときなさいよ!」


あたしはなんとなくムッとして、それだけ言うと、来た道をまた戻ろうとした。


「へェ……。みんな寝たのか」


その言葉が自分のすぐ後ろから聞こえて驚くと、離れていると思ったゾロがいつの間にか背後に立っていた。伸ばしていた手をつかまれ、そのまま簡単に壁に押し付けられる。


「ちょっと……!」


文句の一つでも言おうと思ったけれど、あたしは言葉を引っ込めた。ゾロが笑っていたからだ。この、自信過剰、という感じのゾロの笑みは苦手だった。なんだか、自分の思惑をすべて見透かされているような気がするからだ。そんな目で見詰められると、あたしはいつも何も言えなくなった。


「……だから、来たんだろ?」


そう言うと、ゾロは顔を近付け、唇を強引に奪ってきた。


「んん……!」


ここまで来たのは自分だけど、思い通りになるのはなんだかしゃくに障る。あたしは軽く抵抗してみせた。だけど、もう片方の手も壁に押し付けられ、舌を捻じ込まれると、黙って受け入れるしかなくなった。


「んっ……」


あたしは素直にゾロの唇の感触に酔いしれていた。あたし達は恋人同士じゃない。だけど、時折こうして肌を重ねる事があった。


「……あっ」


いつの間にかキャミソールをめくり上げられ、明るい室内に自分の胸が晒される。それを恥ずかしいとは言ってられない。ゾロにそういうムードを求める方が、なんだか恥ずかしい事のように感じられたからだ。

ゾロに剥き出しの胸を触られるだけで、息が漏れた。先端を舌先で弄ぶ頃には、こちらの表情を面白そうに窺っている。こんな風に見られているだけで、自然と顔が熱を持ち、息が乱れる。


「はァっ……」


下腹部に痺れが伝う度、あたしは身体を震わせた。狂おしいほど感じている。薄く目を開けると、またゾロと視線が交差した。あたしの反応を楽しんでいるようだ。一方的に弄ばれて、いい気はしない。なのに、身体は顕著に反応してみせていた。


「くっ……」


いつもこの目で見られると、虐げられているような気分になるのだ。あたしは耐えられず、ぎゅっと目を閉じた。それを合図にしたかのように、ゾロの愛撫は激しさを増していく。


「あっ……あっ……」


しばし太ももを沿っていたゾロの手が、遂にスカートの奥まで侵入してきた。足の付け根にそっと触れられただけで、あたしは大げさに身体を震わせる。ゾロがあたしに対して、特別な感情を持っていないのはわかってる。わかっていても、身体はどうしようもないほど、この男を求めていた。


「あァっ……!」


いつもこうだ。快感が大きくなる度、意地やプライドや、色々。そんなものが薄く消えていくのを感じる。


「あっ……あっ……あっ……」


ゾロに執拗に責められ、あたしは遂に立っていられなくなった。足に力が入らなくて、そのままズルズルと床に座り込んでしまう。


「はぁ……はぁ……」


ふと見上げると、満足そうなゾロの顔が映った。あたしの愛液で濡れた指をべろりと舐めている。


「自分で脚開いてみな。……欲しいだろ?」


真っ直ぐ見詰めてくるゾロの視線には耐えられず、だけど、言う通りにするのも躊躇われ、あたしは顔を背けた。ゾロは何も言わない。だけど、きっとあたしが動くのを待っている。今まで性急に求めてきたくせに、こんな時だけはゆったりと構えているこの男が、心底腹立たしい。――だけど。

あたしは背けていた顔をゆっくりと戻すと、ゾロを真っ直ぐ見つめ返した。視線を外さないまま、とても悠長な動きで脚を開き始める。ゾロは楽しいものでも見るようにその様子を眺めていた。脚が少し開いた時、ゾロは一度笑ったかと思うと、すかさずあたしの脚を開かせ抱え込んだ。


「あっ!」


簡単に持ち上げられ、そのまま一気に深く貫かる。あまりにも大きく過ぎる衝撃に、あたしは壁に後頭部を擦り付けた。ゾロと繋がったそこから末端にまで走る痺れのような快感で、視界が白んで見えるようだった。


「あぁーーっ!!」


自分の意志とは関係無く、身体を激しく上下させられ、微かな痛みと途方もない快感があたしを責め立てる。


「あんっ! あっあっ! ……」


途方もなく持続する快感に、あたしはゾロの首に腕を回し、受け入れるだけで精一杯だった。もう何も考えれない。余裕なんか一ミリもない。自分の中の僅かな疑問すら追い出して、あたしは快感の渦に身を投げ出した。


「……あっ! ダメ……っ! もうあたし……っ!」


その言葉を合図に、ゾロの動きは一層激しさを増していく。ゾロはいつも、あたしのタイミングを逃さなかった。


「あっ……あっ……あぁーーっ!!」


これはなんだろう。この関係に名前を付けるとしたら、一体なんと呼ぶのだろうか。意識を手放す前に過ったこれらは、今日も言葉に出す事はなかった。
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