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□2.サンジ×ナミ
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「う…………」


ポタポタとナミの頬に冷たいものが伝う。


「ここは…………?」


薄暗く冷たいそこは、倉庫か何かのようだ。

頬を伝うものは、濡れた前髪から落ちる海の滴であった。


「はっ……! そういえばあたし……!!」


とっさに体を動かそうとして、両手の自由がきかないことを知る。


「何これ!? ……趣味悪いわね」


両手は頭の上で揃えて固定されている。

手錠か何かのようだ。

ナミは海に引きずり込まれたことを思い出し、体が少し寒くなる。


「…………あの気味の悪いものは一体何だったのかしら?」

(まだ体が濡れてるってことは……ここに連れて来られてから時間はたってないようね……)

「とにかく誰もいないようだし、逃げるしかないわ!」


両手を勢いよく前に出そうとしてみる。しかし、それはびくともしなかった。


「……も〜なぁ〜に〜? せっかちねぇ……」


突如暗闇から聞こえた声に、ナミの体がビクッと反応する。

その声は部屋の隅の方から聞こえた。

むくっと起き上がる黒い影。

それはとても大きく見えた。

ゆっくりとこちらに近づき、その姿が次第に明らかになる。


「……!?」

「うふふ……はじめまして。あたしはウロヤ。あなた……ナミでしょ?」


腰まである、ナミとは対照的な漆黒の髪をなびかせ、ウロヤは妖艶な笑みを見せる。


「な……! 何よあんた……」


言葉を制するように人差し指を立てて、そっとナミの口にあててくる。

そして、明らかに異形な体をぴったりとナミに寄せる。


「しー。静かに。誰にも邪魔されたくないの」

「……?」


突如、ナミの体に覚えのある感触が走った。

それは徐々に下から上へと迫ってくる。


「!!」

「そう。あたしはクラゲの人魚……。あたしの毒でゆっくり殺してあげる……。誰にも知られずにね!」


その半透明の触手はナミを海へと引きずり込んだものに間違いなかった。


「な……! 何であたしが殺されなきゃなんないのよっ!!」


ナミはおぞましさに耐え切れず、声を張り上げた。


「……悪い子ね」

「う……!」


すでに上半身まで触手に包まれていたナミはさらに口を塞がれる。


「静かにしろって言ったでしょ……? まぁいいわ。教えてあげる」


歪めていた顔をすぅっと元に戻すと、ナミから視線を外し、うっとりとした表情になる。


「すべては……あの方の為……」
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