罪咎の屍
□Don’t stop my life
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「ロルフ」
トールの声ではっと我に返った。髪をかき上げようとして見た手が真っ赤に染まって、まだ乾いていないままの生温いドロドロとした血が体中を濡らしている。足元にはゴロゴロと死体が転がっていた。
「…………………」
ロルフは顔を上げてロゼを探した。
「サー・ロルフ」
探していた方とは反対側からロゼの声が聞え、振り向く。真っ赤なドレスに真っ赤な靴を履いたロゼの体も、返り血を浴びて濡れていた。手に持っていた鎌から滴り落ちる鮮血。血から漂う鉄の匂いが辺りに充満していた。
「…SIVAをしまおう」
ロゼは頷き、鎌の柄の部分についているボタンを押した。シュンッと音を立て鎌が折り畳まれ、柄の部分に戻る。ロルフがSIVA(シヴァ)と名づけた鎌はコンパクトになってロゼからロルフの手に渡された。
「ロゼ」
ロルフは血で濡れた手をロゼに伸ばし、抱きしめた。柔らかい髪に顔を埋め、ただ強く抱きしめる。温もりのない冷たい体。感じられない心臓の鼓動。ロゼから腕が回されることはない。ただじっとロルフのすることを受け止めていた。それが義務であるかのように。
軍がブラックロードに陣を構えてから二週間経った。爆破のせいで建物は殆ど崩壊し、道は死体と瓦礫で埋め尽くされている。ディズリアとシュレイベルはお互い引かず、長期戦になっていた。
「はい、そこどいて。怪我人通ります」
STANTの女性たちがまだ息のある怪我人を担架で運んでいった。その中にはアシュリーの姿もある。ちらりとロゼに視線を送り、悲しげな顔でまた仕事に戻る。アシュリーとはあれから話していない。あからさまに避けられていた。