罪咎の屍
□friend
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雨の音で何も聞えない。お互いの声も物音すらも。雨音は絶えず止まないのに人の気配を感じる音が聞えないのはこんなにも静かなのか。互いの瞳を見つめその心を探り合うかのように、ロルフとセシルは向かい合ったまま黙った。まっすぐなセシルの視線にロルフは緊張で少しずつ鼓動が早くなるのを感じていた。
「寒いな」
しばらく続いた睨み合いは、「飽きた」と言ったように素っ気無く視線を反らしたセシルによってあっけなく終わった。ロルフは静かに「ああ」とだけ返事を返す。さっきまでの睨み合いとは反対に、今度は両者とも視線を反らしたままになった。
「明日には止むだろうか」
「さあな…」
「いつ止むかな」
「いつかは止むだろう」
「そうだな………」
セシルが、座っていた椅子から立ち上がって背を向けた。
「ロルフ」
「ん」
振り向いたセシルと視線がかち合う。静かに怒りをまだ燻らせているのか、セシルのいつもの柔らかい表情はなかった。
「あの日のこと、ずっと聞きたかった」
「・・・・・・」
「俺らにとってすごく辛い話だ。でも、生き残った俺らが忘れちゃいけないんだ。忘れたら無かったことと同じだ」
「ああ…そうだな」
「アシュリーを交えていろいろ話したいな」
「ああ」