罪咎の屍
□BLOOD
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母さんは俺に言ったね、いつか平和と幸せが降って来るよって。俺を抱きしめながら震えて言ったね。
でも母さん、振って来たのは堪え切れようもない絶望と破壊と恐怖だったよ。一瞬にして俺を地獄に落としたのは同じ人間だった。
もう世界は終わりだと思った。もう死んでいくんだと思っていた。けれど俺は浅ましく生き残ってしまった。あの時死ねたら俺は楽だったと思う、けれど俺は生かされてしまったんだ。俺がもう死ぬんだと思って意識を失う前に見た光景は、血にまみれて横たわる母さんと愛する彼女の死体だった。こんな光景の中で死にたくなかったなって薄れていく思考の中でぼんやり感じていた。
「生きてるかい」
朝起きる時のようにゆっくりと脳が起動していく感覚に俺は生きているんだと知った。
「生きているのか・・・俺は・・・」
「ああ生きていますよ。私はロベルト・シュヴァイク、ディズリア軍の研究員です」
そう声をかけたのはロベルト・シュヴァイク博士だった。俺は寝台の上でライトに照らされながら目を覚ました。体は不思議と何処も痛まなかった。ただ腕や足やいろんな所に変な大きい機械と俺とを繋ぐチューブの針が刺さっていた。全身が俺じゃない気がした。
「・・・・・・ロゼ」
何で俺はこんな所にいるんだ。みんなどうした。俺は俺の体は・・・。
「銃弾は取り除いて皮膚は縫い合わせてあります。君はあの戦場の中で助かった唯一の人間です」
じゃあ母さんもロゼも死んでしまったのか。