小説・2

□キラキラ
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「流れ星が流れ終わるまでに三回願いを唱えると願い事が叶うのよ」
元気の夏休みの宿題の星の観察表を懐かしいわと眺めながら、ミチルがそんなことを言った。
元気は本当?とミチルに問いかけ、だったら僕、夏休みの宿題終わらせてって頼みたいなと言った。
中々切実な願い事だなぁと山積みの宿題を見て竜馬は思い、武蔵はしきりに感心している。
他力本願や神頼みはあまり竜馬の趣味ではないが、星に願いをかけるというのはなんとなく夢があっていいなと笑った。
四人でどんなお願いをするかという話題で盛り上がっていると、そこに全身黒ずくめに白い白衣を羽織った隼人が通りかかった。
隼人にもどんな願い事をするんだと問い掛けると、隼人はくだらないなと涼しげに言い放った。
流れ星なんて夏の夜空を見上げていれば五分に一度は見えるぞと、五分に一度にご利益があるのかと言い放った。
竜馬と武蔵と元気は、五分に一度なんだと感心して、ミチルは夢がないんだからとぷんすかした。

「…で、結局探してるのか」
流れ星、と丸めた書類で肩を叩きながら、まだ白衣を着たままの隼人は呆れたように声をかけた。
竜馬と武蔵は柵に掴まり夜空を見上げたまま、おぅと返事をした。
「ミチルさんと元気は流れ星見れたんだってよ」
「けど落ちるのが早すぎて三回も願い事言えなかったんだってよ」
だからリベンジだリベンジと、二人は闘志を燃やしていた。
ふーんと気のない返事をして、落ちる星より純粋にこの満天の星空を楽しむべきではないかと隼人は思うが、それでも二人が真剣で、なおかつ楽しそうなので何も言わなかった。
一応隼人も五分に一度のくだりは、おとなげない対応だったかと多少は反省していた。
「お!」
「流れ星!!」
その声に隼人の良すぎる反射神経と動体視力は、瞬時に流れ星を捕らえた。
「ミチルさんとデート!ミチルさんとデート!ミチルさんと…」
「彼女欲しい!彼女欲しい!彼女…」
竜馬の願いに隼人はマッハスペシャル並みの反応をみせた。
「なっ!?ふざけんなっ!!」
願い事を唱える竜馬の頭にスパーン!と、隼人の丸めた書類がハリセンのようにクリーンヒットした。
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