倉庫部屋

□浅間山観察日誌4
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【ネオゲ】




「おけぇり隼人!飯にするか?風呂が先か?それとも俺か?」
鳥竜館のボロいが広さだけは十分な玄関で、隼人は石像のように固まった。
今日は珍しく日が落ちる前に鳥竜館にたどり着く事が出来た。
夕日の紅が美しくニコニコと笑顔で仁王立ちの竜馬を照らし、遠くでカァカァとカラスの鳴き声が聞こえる。

「…竜馬?」
なんだか変な言葉が聞こえた気がする。
疲れ過ぎているせいか幻聴が聞こえたようだ。
「飯にするか?風呂が先か?それとも、…俺にするか?」
二度言うのは流石に恥ずかしかったのか、竜馬は少しだけ視線を落とした。
それでも隼人の反応は気になるらしく、結果恥じらいながら上目遣いというなんとも可愛らしい姿で返事を待った。
まあ可愛らしいとは隼人のみの感想で、実際にはただのオッサンがちょっぴり照れているだけなのだが。

可愛い!だがこんな夢のようなセリフを竜馬が言う訳がない。
敵の罠かそれとも政府の奴らの策略か!?
隼人はぐるぐる眼で考えた。
「はやと?」
気を抜いている時に時折なる、ちょっと舌足らずな呼び声と、下から顔を覗き込まれる姿に、隼人の脳ミソは沸騰した。
「違ーーーう!!!」
竜馬は可愛いがこれはなんか違うと隼人は絶叫した。

「ハ!?」
己の叫びに目を開けると、幾分白やんだ薄闇の中、木目の天井が目に入った。
一瞬状況が理解出来ず、隣で身動ぐ温もりに視線を寄せると寝呆け眼の竜馬と目があった。
「はやと?」
眠い目を擦りながら擦り寄ってくる。
よしよしとまるであやすように抱き寄せられるのに身を任せると、柔らかくもない裸の胸が心地よく、思わず甘えてしまう。
「怖い夢でも見たのか?」
「夢?…ああ、そうか。夢だったのか」
隼人はホッと一息つき、それから目を閉じながら夢の内容をポツリポツリと話し始めた。

「…それで敵の罠かと思ったんだ」
おかしいだろ?と隼人が顔を上げると、竜馬はなんだか複雑そうな顔をして唇を尖らせていた。
「竜馬?」
「それ夢じゃねぇぞ」
「…なに?」
「おまえ、俺を選んだじゃねぇか」

二人は今ひとつの布団の中で裸である。
当然する事をした記憶があるのだがそれ以外の記憶、夕方に鳥竜館に来て竜馬が出迎えてくれた後の記憶がない。
正確に言えば食事や風呂に入った記憶がなく、夕日に照らされた竜馬が新鮮で、暗くなっても空が白んできても色っぽくて…
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