エア・ギア

□いつの日か
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いつだってお前の背中を見ていた。

いつの日か追いついて、そして追い越すと決めた背中――

お前にとって俺は、数多い仲間の1人……その程度の存在だろうけど。

そう、思っていたのに。



オレンジ色の光が差し込む、放課後の教室。まっすぐな黒い瞳で俺を見つめているのは――イッキ。

両手首は掴まれて黒板に押さえつけられ、俺はただ困惑しながらイッキを見つめ返すしかできない。

「イッ……キ……?」

か細い、自分でも情けない声で名を呼ぶと、イッキはその体を近づけてきた。そして、耳に口を寄せて――

「……カズ」

びくん、と勝手に体が震える。鼓動が早まり、体が火照りだす。

特別距離が近い訳でもない。確かに密着しているが、このくらい男どうしならしょっちゅうだ。

なのに、なんで……こんなに――!

「……っ」

イッキの吐息が耳にかかるたびに体が震える。ふとした拍子にヘンな声が出てしまいそうで、俺はきつく唇を噛んだ。

こいつはからかってるだけだ。きっとすぐに、いつもみたいに笑うんだ。

そうだろう?

なんでそんな目で見てるんだ。

そんな、切なげな目で。

「好き、だ……カズ。お前が」

「……!」

耳元で告げられた言葉は、確かな重みを持っていた。触れ合う体温は、とろけてしまいそうな程熱くて――イッキの言葉に嘘はないのだと否応なく思い知らされる。

「俺、カズが好きだ。リンゴより、シムカさんより……カズが好きだ」

「……イッキ……」

本気だ。

イッキは、本気で俺のことを。

「……」

何を言えばいいのか――それどころか、自分が何を思っているのかすら分からなくて。

俺はただ、黙って俯いた。
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