わたしの声が聞こえますか?
□山成瑠輝のいちにち
1ページ/5ページ
私立明桜学園二年E組一八番山成瑠輝。性別は男、身長は高めで体重は軽め。だが決して華奢な体型ではなく、所謂細マッチョというやつである。
部活はバスケ部で、ポジションはSFとSGを兼任。試合での彼のチームの得点は、ほとんど彼の得点だ。
成績も、教科によって多少の差はあるが、総じて優秀。しかし普段の言動から、あまり優等生扱いはされていない。
「山成くん、おはよー」
「今日も寝てるよ……」
クラスの女子たちがそんなことを言いながら、机に突っ伏している瑠輝のそばを通り過ぎていく。完全に眠っているのか、瑠輝は全く反応しない。
そんな彼の隣で俯きがちに座っているのは、長く艶やかな黒髪をそのまま垂らした少女。多量の髪で顔が隠れ、表情が伺えない。
少女の名前は鷹村栄璃華。いつも独りぼっちの、孤独な少女。
蛇の目エリカ、という花がある。二月十日の誕生花で、花言葉は――孤独。
美しく幻想的で、孤独な蛇の目エリカ。
それはまさしく鷹村栄璃華の姿だった。
栄璃華も瑠輝と同じく眠っているのか、はたまた何かを考え込んでいるのか――誰にも分からない。誰も分かろうともしない。
誰も近寄らない。
誰も何も聞かない。
誰も彼女に触れない。
誰もが少女を孤独にする。
それが栄璃華の望んだこと。