□8 ループする彼の言葉
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「斎藤茉莉は誰とでも寝る女だ、って」
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あれから総司くんは部活があるとかで、すぐに別れた。
私は教室に鞄を取りに行って、今現在は家路の途中だ。
帰り道、総司くんの言った言葉が頭の中でずっと繰り返されていた。
似たような言葉は以前にも何度も言われたことはあった。
なぜ彼の言葉だけが頭から離れないのだろう
あんな言葉、慣れっこなはずなのに。
なんだかすっきりしないモヤモヤした気持ちのまま家に到着する。
「ただいまー」
「あら、茉莉ちゃんおかえりなさい」
「ただいまママ、今からお仕事?」
「そう、ご飯はいつも通りだから適当に食べて頂戴ね…あら、もうこんな時間?!じゃあ行ってくるわね」
そういうとママはさっ、と鏡で全身を軽くチェックするとバタバタと慌ただしく出て行った。
うちにはパパがいない。
両親は私が中学2年生の時に離婚した。
ママはパパが居なくなってから、死ぬ気で頑張ってくれた。
結果、ママは自分のお店を持った。
お陰で前よりは暮らしに余裕が出来たけど、相変わらずママは忙しかった。
そしていつも通り、相変わらずリビングのテーブルの上には小さなメモの書置きと、その横にぽつんと置かれた五千円札が1枚。
それをちらりと横目で確認すると、一度リビングを素通りして自室へと向かい私服に着替える。
そしてリビングに行き書置きを読んでから、五千円札を財布に入れると、私は素早く家を後にした。
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