□7 欲求不満?な彼
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「総司くん?」


「っ…え、?」


「噂、総司くんはなんて聞いたの?」


「あ、あぁ、僕は斎藤茉莉は、誰とでも寝る女だ、って」


彼女の首を見入ってしまっていて、声をかけられたことに気づかず思わずビクついてしまった。



「ああ、それね、まあ簡単に言えば答えはノーですよ」


「…は?」



予想外の彼女の返答に思わず素っ頓狂な声が出てしまう。


噂が嘘だと言うならば左之さんとのことは?まさか左之さんのことが好きだったとでも言うのだろうか?
だとしたら、僕が偶然出くわしてしまったあの屋上での修羅場は―――


なんて悶々と考えて居たら、僕は余程可笑しな顔でもしていたのか、彼女はクスクス笑いながら続けた。



「あはは、総司くん、顔」


「…うるさいよ」


「ふふっ、ごめんね、んーなんていうかな、誰とでもっていうのは違うの」


「?」


「まあ、私にも私なりのルールってものがあるのデス!」


「…ルール?」


「そっ、だから“誰とでも”って言うのは間違いかな」


「ふーん、なんで茉莉ちゃんはこんなことしてるの?」


「んー?総司くんはこういう女の子はお嫌い?」


「そうだね、どっちかっていうと嫌い、かな」


「うわー、正直だな!ちょっとグサッてきたー」


「僕、嘘付けないから、ていうか話逸らさないでよ」


「ははは、そうだねー、理由を付けるならば、」



それまで笑っていたはずの彼女は、一瞬だけ俯いたと思ったらまた顔を上げて、



「欲求を満たすため、かな」



笑った。




僕は彼女が俯いた一瞬、ほんの一瞬だけ寂しそうな顔をしたのを見逃しはしなかった。







(茉莉ちゃん欲求不満なの?)
(欲求不満な女は嫌い?)
(んー、そうでもないよ)
(あはは、この正直者め)



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