□5 彼のことばかり
1ページ/1ページ





教室の戻ったら、眉間に皺を寄せ明らかに怒ってる一くんが近寄ってきた。



「おい、総司」


「なに?どうかした、一くん」


怒ってる理由は多分僕が授業サボったからだ。
僕みたいな奴ほっとけばいいものを、一くんは毎回毎回サボった僕に小言を言いに来る。


「授業をサボってどこに行っていた?」


「んー、人助け?」


「?、ふざけるな総司、土方先生の授業だからわざとだろう、全くあんたは何故土方先生の……」


「分かった、分かった…次は出るってば」


「当たり前だ!」


一くんのお小言を適当に受け流しながら、ぐるりと教室内を見渡す。


茉莉ちゃんの姿はまだ無い。
授業開始まで残り2分。


もしかして戻ってくる途中でまた誰かに捕まったとか?





結局、彼女は授業開始のチャイムが鳴っても教室には戻ってこなかった。

帰ったのか?とも思ったけど彼女の鞄は置きっぱなしだったから多分まだ帰っては居ないと思う。

ていうか、何でこんなにも彼女のことばかり考えてしまうんだろう。
自分でも分からないけど、気が付くと頭の中には僕の名前を呼ぶ彼女の笑顔が浮かんでいた。




そして、授業終了のチャイムが鳴った。
今日の授業はこれでもう終わりだ。
たしか放課後に土方先生が職員室にくるように言ってた、とかさっき一くんが言ってったっけ。


どうせたんまり課題とか出されるんだろうなあ。

めんどくさくていつもなら行かないのに、何故か今日は気がむいたから行ってみた。


けどすぐに行かなければよかったって後悔した。
案の定たんまりと課題を出されて、しかも明日までとか無理でしょ?


渡された分厚い紙の束にパラパラと目を通しながら鞄を取りに教室に戻ろうと誰も居ない廊下を歩いていた。


ら、空き教室ののはずの教室からガタリと物音がした。

その音に課題プリントから視線を上げて、音のした方に向けたらそこには、



「あれ?左之さん…?」


空き教室から出てきた左之さんが居た。



「お、おう!総司じゃねえか、何してんだ、こんなとこで?」


「左之さんこそ、そんな空き教室で何やってるんですか?」


「お、俺はちょっとな…」


目を泳がせて、妙に焦ってる左之さん。


「?、ていうか何焦ってるんですか?」


「あああああ焦ってねえよ!!」


「いや、思いっきりキョドってるじゃないですか」


「ていうか、左之さんじゃなくて左之先生と呼べ!」


「はいはい、そういえばさっき土方さん部活行きましたけど、いいんですか?左之せんせー」


「うおっ!やっべ、じゃあな総司、ちゃんと部活来いよ!!」


「うん、多分行くよ…ってもう居ないし」



返事をした頃にはもう左之さ…左之先生の姿は無かった。



一人になった廊下で僕は左之さんが出てきた空き教室が気になった。

普段使われていないはずの空き教室。
こんなとこで左之先生は何をしてたんだろう?


興味本位で扉に手を掛けて勢いよくガラッ、と扉が音をたてる。


開かれた教室の光景に、僕は目を疑った。





「こんな、とこで、何やってるの?







――――茉莉ちゃん」









(空き教室に居たのは、)
(制服を乱した、茉莉ちゃん)





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ