□4 意外に可愛い
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「何で?クラスメイトなんだし話そうとすればいつだって話せるじゃん」


授業中で誰も居ない屋上に沖田くんの声が小さく響いた。


本当に不思議そうに小首を傾げたキョトン顔の沖田君に思わず苦笑を浮かべた。


「うーん、そうなんだけど…私学校では誰かと喋ったりしないし、」


そう。私には『トモダチ』と呼べる人がこの学校には一人も居ない。
なんか、自分で言うとちょっと虚しい。


「それに、沖田くんの周りにはいつも可愛い子いっぱい居て近寄りがたいし」


沖田くんの周りにはいつも休み時間毎に様々な女の子が集まってくる。

真面目な感じだったり、ギャルだったり、清楚な感じの子だったり、様々な女の子がそりゃもうわんさかと。

そんなところに割り込んでいって、更に話しかけるだなんて、考えただけで鳥肌が立つ。


「じゃあ僕が斎藤さんに話しかける」


けろり、と、彼が吐いた言葉に思わず首が飛んでいっちゃいそうなくらい激しく左右に振ってしまった。


「そ、それはやめてっ」


「…そこまで拒否されるとなんか傷付くなあ」


沖田くんは眉間に薄く皺を寄せ拗ねたような顔をした。
から慌てて否定して、さっき平手打ち食らった頬を撫でた。


「またこういう風になったら嫌だし…沖田くんモテるし、今度は沖田くんの彼女に平手打ちされちゃう」


私はおどけた様にペロリと舌を出して、やんわりと遠慮させていただいた。

沖田くんも誤解が溶けたのか、対して気にした様子もなく、そう、とだけ呟いたのでこの話題はここで終了させといた。


それからは、たわいない会話を繰り返していたら、いつの間にか時間が経っていたようで、授業終了のチャイムが学校全体に鳴り響いた。



沖田くんは教室まで一緒に行こうよ。と誘ってくれたが、沖田くんと歩いてるとこなんて見られたらまた面倒だと思い、用事があるとお断りさせて頂いた。


その際にちょっとだけ悪戯心が働いたので、ちょっと小悪魔チックに沖田くんの名前呼んでみたら、彼はポカンとして、一瞬だけ照れたような顔をして屋上を後にした。




(学校で先生意外と話したのなんていつぶりだろ)





静かになった屋上に私の呟きが吸い込まれていった。

――女慣れしているはずの彼が見せた照れたような表情に思わず頬が緩んでしまった。
というのは内緒のハナシ。




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