短編

□あたためる
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『会いに来て。』




土曜の昼下がり、特にやることも予定もなく、だらだらとテレビを見ていたらテーブルに置いていた携帯が震えた。



たった一言のそのメールに、“待ってて”とだけ返信すると、点いていたテレビを消してた。


部屋着から私服に着替えて軽く化粧して家を出た。


彼の家まで歩いて15分程度なのだが、季節は12月。
今にも雪でも振り出しそうな灰色の空の下に居るとまるで身体が凍ってしまったかのようにその道のりが長く感じる。


さむ、という呟きと共に白い息が吐き出される。

ぶるりと一度震えるとコートの前を両手で抑えて彼の家へと急いだ。







──ピンポーン



呼び鈴を慣らすも中から部屋の主の気配は無い。

まさか、呼び出して置いて居ないとかないだろうな…。


寒さのせいで多少短気になってしまっている脳でもう一度呼び鈴を鳴らす。
が、返事はない。

イライラとした脳でガチャリとドアノブを回せば鍵は開いていた。



居る?鍵も掛けないで不用心な、
以前、私には窓の鍵開けっ放しにして寝ただけですごく怒ったくせに。


とりあえず寒くて仕方ないのでお邪魔することにした。


「…そーじー?」


部屋の主──総司の名前を呼んでも返事はない。
寝ているのだろうか?と思い脱いだコートをソファへと置くとふと脱衣場の方から音がした。


お風呂に入ってたのか、そりゃ呼び鈴も聞こえないわな。


ひとまず総司が出てくるまでテレビでも見て待ってることにした。





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