小説
□安らぎのささやき・天空メラ美様
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「うわぁぁぁっ………。」
真夜中。
ベッドから転げ落ちそうな勢いでもがいているあなた。それを見ていると私も辛い。胸が苦しくなる。
そう、今日もあなたは悪夢に魘されて苦しんでいる。原因は知っている、だって……
「シンシア……行かないで……」
あの日のこと。
私のこと。
村のみんなのこと。
時が過ぎても、記憶は残る。
というか、記憶は過ぎる時の中で、辛く棘のような破片に変わり、一生苦しめるもの。
私も一度あなたの身代わりで死んじゃったけど、逝く者よりも、残される者の方が辛い。
私は戻ってきた。
だけど、昔のような明るく「勇者」なんかを意識しなくたって良い、楽しい日々はもう二度と戻ってこない。
けれど。元の日々に戻れなくても、あなたを元気にすることは出来る。それは、私の使命。役目。
あなたのために、天国のみんなのために、私はいる。ここで私にしか出来ないことをするために。
「ねぇ、」
緊張して声が裏返りそうだ。
だけど、あなたを救うため、私だって頑張らなきゃ、そう自分に言い聞かせて、あなたに言った
「あの日、あなたの幸せは壊れてしまった。それは、私も知ってる。あなたはそれがまた起こらないか心配で怖いんでしょ?」
出来るだけ優しく真面目に。苦しんでいるあなたを癒せるように。
「私だってちょっとだけ怖いよ。
でもね、こんな風に考えてみるのはどうかな?
あなたはずっと苦しんでいた。他の人よりもたくさん。だから、あなたにはその分今度は幸せが訪れる……って。」
「……?」
「きれいごとかな?だけど、あなたが苦しんでいるところを見ていると、私も悲しくなる。
今、私が言ったことを信じなくても、これだけは覚えてて欲しいの。あなたが苦しんでいれば私も苦しい。
そして、あなたが嬉しければ、私も嬉しいよ」
「シンシア」
あなたは、そっと笑った。そして私の胸の中に顔を埋めた。
もうじき、安らかな寝息が立つだろう。
私も、なんだか幸せな気分になった。
終わり