その他

□黄昏時は貴方と
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授業終了のチャイムの合図。それと同時に叩かれる黒板。右手を軽く握り締め、人差し指はちょっと突き出して。

コンコンッ


「今日はここまでだ。いいか、さっき配ったプリントは次の授業までに必ずやってこいよ。忘れたやつは、どうなるかわかってんだろうなぁ」


いつものように人の悪そうな笑みを浮かべた先生を見て、誰もがブルッっと背筋を震わせた。
宿題を忘れた時の彼は……鬼だ、そこに鬼が具現化するんだ。

恐怖だけを残して颯爽と教室から出て行く。出る間際、ちらりと振り返った視線が私とかち合った。

くしゅんっ

猫のようなくしゃみだと前に言われたことがあるっけ。
思わず眼を瞑ってしまった後、視線を先生に戻すがすでにその姿はなく。ふぅっと溜息を一つ吐いて横にかけてある鞄を取り出す。

本日最後の授業で精も根も尽き果てた。教科書は必要なもの以外全部置いて帰るから、さくさくっと帰り支度をする。


「あいかわらず鬼だよね、土方さん」


机に影が落ちる。顔を上げなくても誰だかわかる。もう16年間も聞いてきた声だもの。


「総司……」


頭の後で腕を組み、にやにやとした表情。幼馴染の沖田総司だ。
総司はこう言うけど、結局のところ総司が先生をからかうから、うちのクラスはどのクラスよりも鬼化率が高いんだと思う。
いや、思うんじゃなくてこれは絶対。


「も少し大人しくしといたら? このまんまじゃセンセ、いつか血管切れそうだよ」


言っても無駄なことはわかってるけど言わずにおれない。だってとばっちりはいつだってクラスメイトや幼馴染の私なんだもの。
本人はいつだって飄々としてさらに鬼度をアップさせるから。


「えー、血管かぁ…。うーん、そうだとしたらその前に直接手を下すべきだよねえ。脳内出血で死亡とかおもしろくないし」


にっこり

なんだろ、泣きたくなってきた……。私、なんでこいつと幼馴染なんだろう。いや、家が隣だからなのは知ってるけど。
どんだけ一緒にいてもこいつの頭の中だけは読めない。


「あー、ハイハイ。勝手にどうぞ。周りを巻き込まないならいっくらでもー」
「なに、その投げやりなかんじ。僕は巻き込んでないよ。八つ当たりしてるのは土方さんじゃない」


ね? なんて首を傾げて可愛くみせるけど、誰がどうみても原因は総司だ。
だけどもう、馬の耳に念仏、のれんに腕押し……相手するだけ疲れるってもんだ。溜息を一つ零して席を立ち上がる。





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