その他

□マヨネーズは食べ物じゃありません、飲み物です
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「総悟ォォオオ!!!」

土方さんと総悟の追いかけっこが始まったいつもの屯所内。

「ん〜、平和だぁ」

だけど、今はちょ〜っとこのドタドタは抑えて欲しい。
ま、総悟がバズーカさえぶっ放さなければいっか。
また一からやり直しになんかなったら、それこそこっちがバズーカぶっ放したくなるし。

「よくないですよっ! 亜夢サンンン!!」

「え〜?」

「バズーカ出さなくても、真剣ブン回してるんですから屯所の被害状況は深刻ですよっ」

おかしいなぁ、声に出して言ったつもりないのにジミーが反応する。
ジミーのくせに。

「いや、全部声に出てますからねっアンタ!!! ってか、ジミーって……副長たちのせいで亜夢サンまで……」

シクシクと泣きまで入って正直うっとーしい。地味に空気と同化してればいいのに。
あたしは真面目に作業中なんだから静かにして欲しいんですぅ。

「それにしてもいいんですか? 勝手に副長の部屋に入ってこんなことして……」

「ええ〜? だって悪いことはしてないよ? イタズラじゃないしぃ」

「イタズラ……ではなくても、あるイミこれは嫌がらせにはなるんじゃ……」

そう言いながら何とも言えない目つきであたしの手元を見つめる。
別にイヤガラセでもないんだけどなぁ。まぁ、ジミーの言うことは放置だな、うん。

脇に置いてあるダンボールからせっせと”あるもの”を並べるのにあたしは忙しいのです。
総悟がどれくらい土方さんを引き付けていられるかもわからないし、戻ってくる前に終わらせないと。

「で……何してるんですか? コレ」

「んー、ナイショ。見ててもいいけど動かないでねぇ。と言うより、なんで退がここにいるのかなぁ」

「報告書持ってきたんですよ、そしたら亜夢サンがここにいたんですっ」

「ふ〜ん」

どうでもいいけどね〜。

「今、どうでもいいとか思いましたよねっ!?」

「うん」

そういえば外の追走劇の音がしなくなったな。もしかしたらもう戻ってきちゃうかもしんない。
並べるスピードを上げて、ついでに退にも手伝わせる。
すると後ろの障子がすっと開いた。

「亜夢」

「あ、総悟ぉ。土方さんはぁ?」

息ひとつ乱してない総悟がそこに立っていた。さすが真選組一番組隊長だな、うん。

「今、道場にいますぜ。もうしばらく足止め出来ると思いやすから、追い込んでくだせェよ」
「わかったぁ、ありがとね〜」

よし、それなら部屋から出ても大丈夫だな。居場所は道場っと。
総悟はそれだけ告げると、めんどくさそうに道場へ戻って行った。

「亜夢サン、沖田隊長もグルなんですか……」
「グルって言い方はないなぁ。別にイタズラじゃないって言ってるでしょ」

真意を知らない退は”これ”を悪いことのように言うけれど、あたしと総悟は土方さんに喜んでもらおうと思ってやってるんだから。
まぁ、多少は面白くしないと、こっちが楽しくないってのはちょっとはあるけどさ。

「よぉっし、こっちは完了〜。あとはお外だぁ。退はもう帰っていいよぉ。しばらくこの辺は近寄らないこと」

「……ハイハイ」





***





総悟の稽古という名の決闘を終えて(私闘は禁じられてるんだ、作った本人が破るわけにはいかねェ)部屋に戻ろうとしたところ、廊下を点々と落ちている”ソレ”に気付く。

「アイツラ、またロクでもねェことしてやがんな」

どうやらコレは俺の部屋まで続いているらしい。両手にそろそろ抱えられない量になってきたが、
これを放り出すのは忍びない。
案の定俺の部屋の前まで落ちていたソレらを一旦廊下に纏めて置き、一呼吸。
ヤツラの悪戯なら、部屋の中から何が飛び出してくるかもわからねェ。
どんな事態でも対応できるように心を落ち着かせ、障子から少し距離を保って勢いよく開け放つ。

「……何だコレ」

呆然とそれらを眺める。眺めるが、どう見てもアレだ。大量の……、

「マヨネーズだよなァ? しかも規則正しく並んでやがる」

「ノンノン。ただのマヨじゃないですよぉ」

気配もなく背後から聞こえた声にハッと振り向くと、そこには亜夢がいた。

「よぉ〜く見てください、土方さん。並んでるマヨ、なんかの形に見えませんかぁ?」

言われてよくよく見てみれば、この形は……。

「マヨネーズ……」

「せ〜か〜いっ。だけどぉ、マヨ形マヨネーズなだけじゃなくってぇ」

「マヨドミノなんですぜィ、土方さん。だから倒さなくちゃなんねェ。アンタが最初のドミノのピースだァ」

またもや気配なく亜夢の後ろから現れた総悟に勢いよく肩を押される。
もちろん体勢を崩して。

「ちょっ、オイィ!!?」





「「Happy Birthday 土方さん!」」





ああ、そう言えばそんな日だったか……なんて思う間もなく身体はマヨネーズの方へ。
視界の端にニヤリと笑った亜夢と総悟が見えた気がしたが、それを確認するよりもブチュゥっと嫌な音をさせて部屋はマヨネーズに塗れた。

「テメェラァァアア!!!!」

「マヨ好きな土方さんに、マヨの海で泳いでもらいたかったんですぅ。部屋もマヨの臭いが充満して」

「これぞ、マヨラー冥利に尽きるってヤツじゃねェですかィ。良かったですね、土方サン。俺は死んでも遠慮しますがねェ」

そう言って二人は脱兎の如く駆け出していった。
どうすんだ……この部屋。
追いかけたいが、身体も部屋もマヨに塗れて動きたくねェ。

「……シメる。ぜってェシメる!!!」





いくら好きでもこれはさすがに遠慮したい……っていうか
食べ物は粗末にするんじゃアリマセン!!










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