という経緯があり、ST☆RISHご一行様は聖川財閥系列の老舗旅館を貸し切り、疲れた身体を癒すべく数日後、三日間の小旅行へと旅立った。 春歌も上手く仕事が片付けば後から合流する予定だが、可能性は五分五分だろう。 一応終わり次第、朔夜の携帯に連絡が入ることになっている。 真斗が貸し切った旅館は辺りを木々に囲まれる閑静な立地に建っており、築数十年という長い歴史をもつ木造平屋建ての純和風。 車道から程遠いところにあるから、ちょっとした隠れ家風でもある。 「わぁ、すごいですねぇ!」 レン、真斗以外の五人はこういうところ自体が初めてなので思わず見入ってしまい感嘆の声を上げる。 「すげぇな! つか、七人しかいねーのに、こんなとこほんと貸し切っちゃってよかったのか?」 「離れだけでも十分だったでしょうに……とは思いますが、朔夜の秘密を守ることを前提にするなら必要なことですしね」 朔夜はもちろんなのだが、ST☆RISHの休暇をのんびりと過ごすためにも貸し切りの方が都合がいい。 自分達にとっても、そして旅館側にとっても、これが一番いい選択だっただろう。 「サクちゃん、行きましょう!」 早く部屋を見たくてうずうずしていた那月が朔夜の手を取り、玄関へと早足で進んでいく。 「わわ、待ってください那月くんっ」 少し強引なそれに引きずられそうになりながらも、逸る心は同じな朔夜が那月の歩幅に合せて駆ける。 もちろんそれを見た音也も、負けてはいられないと対抗心を燃やし、空いてる方の朔夜の手を取るために、後れを取った距離を埋めようと駆け出していった。 「やはりあいつらが一緒では、静かに過ごすことは出来んな。万が一宿泊客がいたとすれば、着いた早々気付かれてもおかしくはなかったろう」 「いいじゃないか、客はオレ達以外誰もいないんだし。それより見てみろよ、朔夜のあの顔。すごく楽しそうじゃないか、それだけでもここに来た甲斐はあったね」 普段から意識して男の子を演じているわけではない朔夜だが、今浮かべている表情はどこから見ても女の子にしか見えない。 きっと周りに秘密が漏れるという心配事がないからこその顔なのだろう。 玄関で待ち構えていた女将と仲居達に深々と出迎えられ、真斗が軽く会話を交わした後、一行はそれぞれの部屋へと案内された。 ゆっくり過ごしてもらおうという旅館側の配慮からか、一人一部屋に割り振られていた。 貸し切った上、数部屋で縮こまってしまうのも逆に申し訳ないのでそのまま使用することにしたのだが、普通なら二〜四人で泊まるはずの部屋を、一人で使うのはあまりに広すぎて落ち着かない。 個々の部屋についた仲居から食事もこちらへ運ぶと言われ、せっかくみんなで来たのにそれでは寂しいと朔夜がそれを拒否し、結局食事は大広間を手配してもらいそこでみんなでとることとなった。当然ながら、朔夜だけでなく他のメンバーもそれは嫌がったのだが。 「朔夜〜、入るぜ?」 部屋に荷物を置いて数分後、翔と音也が早速朔夜のところへやって来た。 「あ、二人共もう浴衣着てるんですね」 「うん、すんごい楽だよ〜。朔夜も着替えたら?」 「やっぱ温泉宿は浴衣だろ」 「あはは、温泉宿っていうか老舗高級旅館ですけどね」 初めはそれぞれの部屋で違う景色が楽しめるように、と点在した部屋を用意されていたのだが、こうして行き来がしやすいように隣り合った部屋を新たに用意してもらった。 その際トキヤが「朔夜だけは離れにするべきです」と紅一点の彼女を気遣う発言をしたのだが、「離れってことは、忍んで行っても気付かれないってことだな」とレンが零した言葉に急いで撤回したのは、朔夜以外の六人だけが知る。 「サクちゃん、お風呂おっきかったですよ! 一緒に入りましょ〜ね〜っ」 「え…、っと」 「ふふ。照れてるサクちゃん、ちょ〜カワイイですっ!」 「やっぱ温泉と言えば混浴だよねっ! (那月、ナ〜イスっ)」 「や、それは……」 「温泉といえば女将がさっき来て、間の悪いことに女湯でトラブルがあって使えない状態らしいよ?」 「「え!?」」 「(ぐふっ!)」←肘撃ちがみぞおちに決まったらしい 「真斗くん、どうかしました?」 「(おい、お前まで反応してどうする、聖川)」 「(しかしっ……!)」 「(レンがせっかく機転を利かせたのですから、話を合せてください。それともあなたは朔夜と一緒に入りたくないとでも…?)」 「(っ、それは……)コホン。ああ、どうやらそうらしいぞ。明日には直ると言っていたから今日のところは我慢してくれ、サク。 (あとで旅館の連中に口裏を合せるように言っておかねば)」 「そりゃ残念だったなー、朔夜。ま、みんなで入った方が楽しいじゃん」 「そういうことなら……」 「「「「「「(よし!!!!!)」」」」」」 「みなさんは男湯を使ってもらって、私は混浴の方を一人で使わせていただきますね? それにしても他にお客さんがいなくて良かったですね〜。 あ、もし混浴湯の方が広いんでしたら私が男湯の方を使ってもいいですよ?」 「「「「「「……………(そうきたか)……………」」」」」」 「あ、じゃあサクちゃん。お風呂から上がったら、僕と一緒にお庭を散歩しましょ〜! お庭もとっても素敵でしたぁ、何より周りに明かりが少ないですから星がとっても綺麗に見えそうです」 「本当ですか? わぁ、楽しみですね」 「「「「「(まぁ、朔夜《サク》が楽しそうだからいいか)」」」」」 次ページはおまけ おと様からの2000hitリクエスト、 《朔夜ちゃんとプリンス達がわいわいする話。(なっちゃんが出張る)》でした。 が、那月…そんな出張ってませんね、ごめんなさい; 学園編とST☆RISH編どちらにするか悩んだのですが、卒業してからのほうが行動範囲が広がるのでこっちに。 本当は食事シーンや温泉シーンも書いてたんですけど、このノリだとダラダラしちゃうだけだったのでばっさり切りました……。ほとんど会話文ですみませn |