過去Log置き場

□長編設定 義兄弟パラレル
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毎朝、朔夜の行動は決まっている。

1、真斗・トキヤがいない時や、まだ支度が済んでない時などは朝食作り(か、その手伝い)

2、寝ている兄弟を起こしに行く

以上。

2に関しては、『朝から兄弟の顔を見ないと一日が始まらない』と思い、いつの頃からか食卓に姿を現さない彼らを、朔夜が起こしに行くことが日課となってしまったのだ。

そして今日も、いつまで経っても起きてこない兄弟を起こすために、彼の部屋を訪れていた。


「おとくーん、そろそろ起きてくださ〜い」


ぽふぽふと軽く布団を叩くが、


「っん…………、すぅ…………」


反応はしたもののすぐにまた眠りに落ちてしまう。なので今度は身体を揺すってみることにした。


「音也くんっ、起きないとまさくんのご飯覚めちゃいますよっ」

「ぅんっ……、もう…ちょっ………と…」


頭まですっぽりと布団を被っているため、こもって聞こえにくいけれど、まだまだ睡眠を貪ろうとしている。
けれど浮上しかかった意識を、やすやすと見過ごす朔夜ではない。

今度はバスッバスッと強めに布団を叩き始める。


「おっとやくーん! ご飯に遅れたらみんなに怒られますって」


家にいる者は極力揃って食事をとる。
子供だけになってしまったあの日、朔夜が初めてこの家の子供として来た時から、この家の習慣として定着してしまった家訓のようなもの。

初めての女の子が嬉しくて、兄弟の間で取り決められた約束事。
新しい両親が出来るはずだったのに、家族に迎え入れられる前に失ってしまった。

子供だけしかいなくなったこの家に、それでも断らずに来てくれた彼女に淋しい思いは絶対にさせない。
そう誓ったのだ。


「…ぃ…痛い……よ、朔夜……」


もぞもぞと布団から顔を出してみたものの、太陽の眩しさにぎゅっと眉間に皺を寄せ、再び潜ろうとする音也だったが、ガシッと布団を掴まれてそれが叶わない。


「おはよーございます、音也くん」

「ん……おは、よ…朔夜」


瞼を閉じて日差しに慣れるのを待ってから、ゆっくりと瞳を開ければ、すぐそばでにっこり笑う朔夜の顔。

何度となく繰り返されてきた遣り取り。
本当は朝一番に彼女の声が聞きたいから、こうやっていつまでも布団から出ないのだと知ったら怒られるだろうか?


(もちろん、フリ、なんかじゃなくって、起こしてくれるまでは本当に寝てるんだけどさ)


ふわぁ、と欠伸をして寝ぼけまなこを擦る。


「顔洗ってすぐに来てくださいね? たぶんもう準備出来てるから」

「わかった〜。あ、朔夜、朔夜」


立ち上がって部屋を出て行こうとする朔夜を呼び止める。

ちょいちょいと手招きをする音也に、ドアに向かって歩き始めていたため、少しだけ離れた距離を、再びトコトコと戻る。


「わっ!」


未だベッドに寝ている音也を上から覗き込むように上体を曲げれば、突然引かれる手。

だけど彼の上に倒れこむことはなかった。


「毎回毎回、いい加減にしなさい音也」


引かれた手とは逆に、後ろから腰に回された腕。


「トキヤこそ、毎回毎回……。あーあ、また邪魔されちゃった」


音也を起こしに行った朔夜がいつまでも戻って来ないので、確認しに来たトキヤが後ろから彼女の腰を支えていた。

こんな音也のイタズラも毎度のことだから、起こしに行かなくても良いと言っても朔夜は聞く耳を持たない。
だからこそ心配でこうやって見にくるのだが。


「朔夜もですよ。何度も同じ手に引っかかってないで少しは学習しなさい」

「えー? だって別にヤじゃないし。おとくんなりのスキンシップでしょう?」


孤児だった自分達は人の温もりに飢えている。
それはトキヤだって例外ないのだが、素直に表すことは性格ゆえ出来そうもない。


「そうそう、俺なりのスキンシップ! だから、邪魔しないでよトキヤ」

「あなたのその行為には裏があるでしょうが、まったく……。
いいから早く起きなさい。砂月さんが珍しく席に着いてるので、これ以上待たせると大変なことになりますよ」

「さっちゃん、部屋から出てきたんですか!? わぁ、挨拶してこよ〜っと」


掴んだままだった二人の手からするりと抜け出して、タタタッと部屋から出て行く朔夜を見送ってから、トキヤは音也の方を向き直る。


「あ〜あ、行っちゃった。今日はいけると思ったんだけどなぁ」

「私が許すはずがないでしょう。『私の』、可愛い妹なんですから」

「可愛いのは認めるけどさぁ、トキヤだけのじゃないじゃん。俺の姉でもあるわけだし」

「だからって布団に引きずり込んで二度寝しようとするのはやめなさい」

「ちぇー。トキヤのケチ」


家に来た当初、一人きりで眠ることを不安がる朔夜のために、みんなで代わりばんこに一緒に寝たことがある。
だからなのだろうか、朔夜が男のベッドで一緒に寝ることに抵抗がないのは……。

自分達家族の場合だけの話であろうが、それでももう少し危機感を持って欲しい。


「それより本当に起きた方がいいですよ。砂月さん、徹夜明けですので機嫌はよろしくないと思いますから」

「そ、それを早く言ってよ!!!」


慌てて飛び起きた音也を横目で確認しながら、トキヤは兄弟が待っているファミリールームへと足早に向かった。










(そう、可愛い『妹』であり『姉』。
だけど誰の手にも堕ちて欲しくはない特別な女性、という考えは私達みんなの共通なのでしょうね)












もはや長編主とは別物として見てもいいですよね。
でも慣れ親しんだキャラなので彼女が1番書きやすい……。
呼び名、性格は多少違います。
今回は日常朝の光景を。

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