僕達は八人兄弟、全員男の子ばかり。兄弟と言っても血は繋がってないんですけどね。 義父母は資産家の方だったんですが、お子さんを生まれて間もなく亡くされて、しかも義母もその時の出産の際、二度と子供を望めない身体になってしまったそうです。 もともと子供好きだった義父母は悲しみを乗り越えると、自分達の手で子供を育てたいという気持ちはどうしても諦め切れなかったようで、施設から子供を引き取って育て始めました。 それが僕、那月です。いえ、僕だけじゃなくてもう一人。僕の双子の兄弟で分身の砂月も一緒に。 本当なら引き離されてもおかしくない状況なのに、離れたくないと言い張った僕達を、あの方達は快く両方とも引き取ってくれたんです。 お二人はとても優しくって、まるで実の息子のように僕達を可愛がってくださいました。 僕はとぉっても嬉しかったんですけど、さっちゃんは照れくさかったのかな。 頭を撫でられたりすると、「やめろっ!」ってすぐ怒鳴ってましたねぇ。 でも本当は嬉しかったの、僕は知ってるんですよ。もちろんあの人達も。 それからです。もともとちょっと変わった感じの義父母だったんですが、僕達がこの家に来てから、毎年一人ずつ何処かの施設から引き取ってこられ、僕達の兄弟はどんどん増えていきました。 年齢はほとんど同じで、だから兄弟でもあり友達のような感覚でもあります。 彼らが引き取ってくるまで、僕達は家にやってくる子の性別を、事前に知らされたことは一度もなかったんですが、こうやって男の子ばっかりなのは、やっぱり亡くしてしまったお子さんが男の子だったから、というのがあるんでしょうね。 さすがにもう最後にしてくれ、と誰が言い出したんでしたっけねぇ。 年頃の子供がこれ以上増えてもという話になりまして、義父母も納得してくださいました。 けれど九人目の兄弟を迎えに行くために、義父母を乗せ施設へと向かった車が、大型トラックの横転に巻き込まれ、彼らは帰らぬ人になってしまいました。 資産家と言っても一代で築き上げた義父母は、駆け落ち同然で結婚したため親戚付き合いもない。 僕達も彼らのご両親が、どんな方達なのか一切知りませんでしたから、知らせる術もありません。 もとより、彼らの口からご両親の話を聞いたこともなかったですから、本当に絶縁なさっていたんでしょう。 だから葬儀もすべて自分達で手配しました。 幸せな時を過ごさせて頂いた僕達に出来る、最後のことでしたから。細かいことは会社の方が手伝ってくれましたっけ。 きっとずっと前から用意していたのでしょう。 遺言書により、彼らの残した遺産を突然そのまま引き継ぐことになってしまったのですから、僕達はどうしたらいいのか途方にくれそうになりました。 義父の会社は有能な後継者がいましたから、その方がそのまま継ぐことになりましたし、会社の運営費用は別にきちんとあるから、心配しなくていいとも言われてしまい、余計にその遺産をどうしていいのわからなくなったのです。 でも僕達のために彼らが残してくれたんですから、大事に、いつか自分達だけで生活出来るようになるまで、ありがたく使わせて頂く事にしました。 施設に戻る、なんていう選択肢は初めからなかった僕達には、子供だけで生活する上で欠かせないものでしたし。 そしてひとつだけ。今までのお礼も込めて、彼らが望んだ最後の子供。僕らはその子を受け入れることを決めました。 せっかく決まっていた話なのに、ここで流れてしまってはその子も可哀相ですし。 ただこういう事態で、保護者のいない状況ですから、もし本人が望んでくれれば、の話ですけどね。 僕らの足ではとても迎えに行ける所ではありませんでしたので、そこの施設に連絡してその子を連れてきてもらいました。 本来なら未成年である僕達が引き取り手だなんて出来るはずないんですけど(僕達当時はまだ中学生くらいでしたしね。 逆に施設に入った方がいいのではと言われました)、頭の良い五番目と六番目の兄弟の、トキヤくんと真斗くんが大人顔負けの口調で言い包めてしまいました、すごいですよねぇ。 「おっと、また男かい?」 僕やさっちゃんと同い年のレンくんがその子を見てポツリと零しました。 そう、九人目も男の子だったんです。とても綺麗な顔をした男の子。 不安そうな表情をして僕達を見てますが、年齢はたぶん下の子達と同じですかねぇ。 とっても可愛くてぎゅーってしちゃいたいくらい。 「お、俺様よりデカイじゃねーか……」 彼を見て呆然と呟いているのが一番下の翔ちゃん。彼はこの家に来た時からちっちゃくて、今でもやっぱりちっちゃくて可愛い。 「ん〜、可愛いねっ! お名前は何ちゃんかにゃ〜?」 「今いくつっ? 俺と同じくらいかな」 四番目と下から二番目の弟、トキヤくんの双子のお兄ちゃん(僕達と一緒なんです)、ハヤトくんと音也くんが瞳を輝かせて、ぱーっと彼に寄って行く。 あーずるい、僕も行きたいのになぁ。 あまりの彼らの勢いに、連れてきてくれた施設の人の後ろに隠れてしまう。 けれどそぉーっと顔を覗かせて、ぺこりと頭を下げてくる様子はやっぱり可愛い。 きっと僕と同じように他の兄弟も思ってるはず。 ずっと一緒に暮らしてきたんだから、それくらいのことわかるようになりましたからね。 「この子朔夜ちゃんと言います。ここのご夫妻も勘違いなさっていたんですが…………女の子なんですよ」 それを聞いた途端、翔ちゃんと音也くんとハヤトくんが飛び上がって喜んだ。 「「「やったー! 初めての女の子!!」」」 「おチビちゃんより大きいけどね」 「!! うっせー!!!!」 こうして僕らは九人兄弟になったんです。 掲載にあたり、少しだけ修整。でも相変わらずのゆるふわ。 長編設定を使ってのパラレル、みんなが義兄弟話。すごい大人数……。 もちろんみんな過保護であり、猫っ可愛がりすればいいんです! これはさっちゃんもHAYATOも双子設定で。 ありがちですが、日常とか小ネタで展開したいな。 ちなみに、年齢と誕生日から上から順に、那月→砂月(どっちを上ににしようか迷った)→レン→ハヤト(名前はローマ字表記をやめ)→トキヤ →真斗→朔夜→音也→翔になります。 |