触れる手、交わす言葉、繋ぐ心

□7月  -ハプニング-
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「朔夜はプールに入れないのにどうするんだよ」

「心配ナッスィング!!」

「ルールの説明しようとしたとこで社長に邪魔されたからな。さっきも言ったが本来の水球とは違ってな、ゴール役を両チーム作ってもらう。プールの両端の飛び込み台にそれぞれ立ってもらって、他の三人は水の中からボールを奪い合いながら、自軍のゴール役にパスが通れば得点だ」

「ということは、必然的に朔夜がゴール役ですね」


ポートボールみたいなものらしい。まぁそれなら服を脱ぐこともないしいっか。

なんだかどんどん話が進んでいくけどこれ、勝ったからってなんかメリットあるのかな。「負けたものは去る」って言ってるくらいだから、勝ってもただ単にプールが広々と使えるだけなんじゃ。
それなら、どうせプール入れないし負けてもいいかな、なんて思う。


「それかーるぁー! 負けた方には罰ゲームを受けてもらいマ――-―スッ」


負けた方のデメリットはずいぶん明確なんですね…。


「ズバリズバズバッ、負けたチームには、一日女装をしてモライマッスゥ、イェー!」


それまでこれから行う勝負に気合を入れていた音也くんを含め、出場を余儀なくされた私達の誰もが凍りついた。

筋トレとかグラウンド何周とかプール何往復とか、どっかの掃除とかそういうものを想像してたのに、女装。よりにもよって女装ですか。

面白いと思ったことはノリでやってのける人だから、きっとくじで私を引いた時にそれを決めたに違いない。バレるなって言ったのは学園長なのに、これも試練ですか、テストですか?


「アイドルたるもの演技力もダイジデース。ナーノーデ、それを養うためにも女性としてしっかり演じきってクダサーイ」

「あ、あの……」


学園長が無理やりこじつけたようなその説明に(どうせ楽しそうだから、としか思ってないはず)、メンバーの内の一人である七海さんが恐る恐る挙手をして質問する。


「わたしは元々女の子なんですけど、どうすれば……?」


そうだ、自分のことで衝撃を受けてたけど、彼女は女の子だ。女装だなんて罰ゲームにはならない。けれどこのメンバーの中で唯一の女の子(対外的には)である彼女に、罰ゲームなんか受けさせたくない。

そもそもアイドルを目指している私達と作曲コースの彼女じゃ、体力面からして違うのだから、そんな中一緒に戦う彼女にリスクは負わせたくない、というのは音也くん達も一緒だろう。


「オーウ、それは考えていませんデシタ。ソーリーソーリー。
ふむ、Miss.七海は作曲コースですし体力的にもハンデがありますから、今回は特別に免除してアゲマショー」


ホッとした。彼女一人違う罰ゲームを受けるとなった場合、学園長のことだからまたとんでもないことを言い出すんじゃないかと、同じクラスである音也くん達はもちろん、レンくんや翔くんも面識がないわけじゃないから、内心ヒヤヒヤしてたと思う。

そして学園長は自分の言いたいことだけ言うと、ゴンドラに乗ったままプールの中へと沈んでいった。
その際ゴンドラは瞬時にして全面をガラスか何かで覆われ水が入ってこないようになり、底まで沈んだかと思ったらゴンドラが丁度入るくらいにプールの底が開いて、大量の水とゴンドラすべてがそこに納まると、またゆっくりと底が塞がっていった。減った量の水は自動で足されてる。
ゴンドラを吊っていたと思われるワイヤーは音もなく天井へと上っていった。


「なんなんだこれは…」

「うふ。シャイニーったら相変わらず派手ねぇ」


ああ、日向先生が頭抱えちゃった。きっとこれも聞かされてない改造だったんだな。


「んじゃ、七海はゴールのがいいよね。俺達に混ざってボール取るのは危険だし」

「はいっ、みなさんに迷惑をかけないようにしっかりボールを受け取りますね!」

「それでは僕達は、ちゃーんとハルちゃんが取りやすいように投げないといけませんね〜」

「一十木……実は………いや、なんでもない。俺は相手側のゴール付近でディフェンスにまわろう、オフェンスは頼んだ」





「……女装…ですか…。なんとしてでも避けねばなりませんね」

「ぜってー勝つ! 負けらんねぇ……」

「オレ達が組むんだ、負けはありえないだろう。ね、アッキー」

「もちろんです」

「体育祭の時のように転んだりして、水に落ちないでくださいね」

「う……、が、頑張ります。それより、作戦でも立てますか?」

「何かいい案でも?」

「そうですねぇ……、那月くんを翔くんがマークすれば必然的にオフェンスが減る気がします」

「おまっ、朔夜!! 俺を生贄にする気か!?」

「そうだね、背の高いシノミーを押さえることが出来るのは有利かもね」

「では、その方向でお願いします。翔」

「…………オレの意思は無視かよ……」


こうしてAクラスvsSクラスの水球対決は、なんだかよくわからないままに開催されることになった。

女装をすることは私にとっても罰ゲームではないけれど、着慣れないという面では十分恥ずかしい気がするからやっぱり罰ゲームになるのかな。

とにかくそれで下手に不信感を持たれても困るからこの勝負、勝ちにいかないと。











あああ、シャイニーの口調が偽者…。彼の喋りは予測不可能です。
前半部、訳わかんなくなってますが流し読みで!
この寒い時期にプール話。でも冷暖房完備の屋内プールだから、実は1年中使われてたりするのかも?
真斗は苦手なものが他のプリンスに比べるとはっきり出てますよね。
虫嫌い、泳げない。なんて……カワイイやつだ。
ゲームでは一様にハルちゃんの水着姿にみんな照れてるから、きっとハルちゃんはナイスバディ。
うちの子は……いや、言うまい。

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