触れる手、交わす言葉、繋ぐ心

□6月  -アイドルのお仕事-
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屋上に着くとすでに機材などのスタンバイは済んでいた。

HAYATOの歌う予定の場所には、バックバンド用のギターやキーボードなどの楽器も用意はされているのだが、それらは実際に演奏されることはなく、またそこに配置されるのもダミーの演者らしい。ちらりと先ほど見たけど、そのバックバンド(偽)の人達はかなりのイケメンだった。

見栄えを良くし迫力を出すためのもので、結局はオケを流すそうなのだ。本物はHAYATOの歌声だけ。なので今はそのオケや機材などの最終調整が行われていた。

HAYATOは現在ここにはおらず、レコーディングルームで日向先生や月宮先生にインタビューしている頃だろう。そこでの撮りが終わったあと、CMに入った隙にこちらへと移動してくる手筈になっていた。

とそこへ、どうやってここまで来たのかはわからないがAクラスのいつものメンバーが現れた。

今はまだ登校時間前で、撮影に関係ない生徒は遠くからの見学は許されているのだけど、屋上は関係者以外は立ち入り禁止になっているはず。それなのに何故ここに彼らがいるのだろう。


「おはよー、朔夜」

「サクちゃん、おはようございます」

「おはよう、サク」

「おはようございます、みなさん。どうしてここへ?」

「園長先生に呼ばれたんだよね」


疑問に答えてくれたのは音也くん。


(学園長がこの場に呼んだ?)


私達の誰もそんなことは聞かされてないけど、スタッフの人が特に音也くん達がいることを咎めてこないから、きっと話は通っているんだろう。

あの人の考えてることはよくわからない。けど、音也くん達の実力はかなりなものだから、後学のために特別に近くでの見学出来るようにしたのかもしれない。


「おいおい、オレ達には挨拶もなしかい?」


楽器のことで打ち合わせしていたレンくんと、待ち時間の間に柔軟をしていた翔くんが彼らの存在に気付いてこちらにやって来た。


「あ、レン! それに翔も。ごめんごめん、朔夜しか気付かなかった」

「なんだよそれ、それでも俺の友達かっ音也」

「声を掛けられる位置にいたのがサクだけだったのだからしょうがないだろう」

「ふふふ、みなさんすごーく忙しそうですねぇ!」


本当はこんな和んでちゃいけないんだろうけど、まだ本番には時間があるし、自分の準備はすでに終わっている。
手の空いているスタッフさん達も、こちらを微笑ましく見ているものだからつい。しかも彼らと話すことでホッとしてしまった自分がいる。

緊張してないつもりでもそれなりにはしてるらしい。那月くんの話し方とか、聞いてるだけで安心するし。


「呼ばれたから来たけど、本人はどこにもいないんだよなぁ。これってこのまま見ててもいいってことなのかな?」

「呼ばれたって誰にだよ?」

「学園長らしいですよ?」

「ボスに、か。だったらいいんじゃないか?」

「わぁ、良かったですね! 始まる前から遠くからは見させてもらってたんですけど、近くからだとより細かいところまで見れますからねぇ」

「そうだな。折角の機会なのだし、俺達は邪魔にならないところで見学させもらうとしよう」


私もそう思う。一度は断ろうと思った。そうしないと不公平だと思ったから。けど日向先生に諭され、こうして実際にこの番組に参加させてもらっている今、いつになく充足している自分がいるし、やりがいがあって楽しい。

学生時分から現場に触れられる機会はそうそうないだろうから、今はこの話をもらえたことに感謝をしている。

そうやって話が一段落し、真斗くんの言葉で三人が隅っこの方へ移動しようとした時、屋上の扉がガチャリと音を立てた。











はい、中途半端なとこでぶったぎりスミマセン。
やっぱり人をいっぱい出そうとすると長々と…。予定してたところまで進めることが出来なかった…。
引き続き偽HAYATOが登場してますが、こ、こんな口調で大丈夫か?
ゲームとかでHAYATOが喋ってるとこ、トキヤだと思うとニヤけます。
どう見てもノリノリにしか見えないんですよ、トキヤさんっ。

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