触れる手、交わす言葉、繋ぐ心

□6月  -アイドルのお仕事-
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冷たい視線で見据えられ慌てて違うと返す。トキヤくんの実力ならばきっと出ることになるだろうと思ってたのに、やっぱり断ったのかな。最初に名前を呼ばれてたのは彼だし、候補に挙がっていたのはたしかだろう。

その後のやり取りを聞いていなかった私には、どういう経緯でトキヤくんが選ばれなかったのかがわからなかった。

そう言えば同室の音也くんが、トキヤくんは朝早くから出掛けていることがあるって言ってたっけ。そのせいで、今回も出れないのかもしれない。


「事前の打ち合わせが撮影の前日。これもこの学園でやることになってるから忘れんなよ」

「はい」

「それから、秋。放課後、俺んとこ来い」

「………、わかりました」


これは、聞いてなかったことを怒られでもするんだろうか。でも日向先生はその場ですぐに怒る方で、わざわざ呼び出してまで注意するなんて話、今まで聞いたことない。

ということは、だ。今の私が思いつくのはひとつしかない。


(んー、ついに誰かにバレたかな?)


そうだとしてもすでに口止めされているだろうから、心配はないだろう。

その相手が誰かは気になるけど、まだ確実にそうと決まったわけではないので憶測するだけ無駄だろうし、放課後になれば呼ばれた原因がわかる。

そんなことよりも今は、あれだ。おはやっほ〜。

授業が終わってすぐにトキヤくんのところに聞きに行く。


「トキヤくんは今回の話、知ってたんですか?」

「いいえ。いくらあの馬鹿でも事前に情報は漏らすことはありません」

「うっわ、トキヤきっつー」


基本的に私達はHAYATOの名前を彼の前では出さないから、こういう言われ方を聞くと、なんだかHAYATOが可哀相になってくる。

ほんと、なんでかなぁ。そんなに嫌な感じじゃなかったけど、HAYATO。確かに性格は合わないとは思うけど。


「HAYATOのアシスタントをするんだろう? どうせなら可愛いレディのアシスタントをやりたかったんだが」

「あのコーナーだと、女性はいらっしゃらないですしねぇ。残念ですね、レンくん」

「まったくだよ」


私もそうなんだけど、撮影に対する気後れというか緊張感はまるで感じてないみたいだな翔くん達。レンくん自身は今までも何度かテレビ出演していることもあって、そうゆうのは慣れっこなんだろう。


「折角ならトキヤくんとも一緒にテレビに出たかったんですけど、これも残念です」

「当日の朝は私も用事があるので見に来ることも出来ませんが、朔夜なら上手くやるでしょう」


やっぱりそうなのか。ちょっとがっかりしたけど、用事があるなら仕方がない。それに下手に共演して雰囲気悪くなられても困るし。けどきっとトキヤくんのことだから、そこはそれ、仕事として割り切るんだろうということが想像に難くないから、本当にそうなっていたとしても、実のところあんまり心配はしてないけど。


「僕と翔くんはテレビ初デビューですね。お互い頑張りましょう」

「おう、任せとけって。朔夜のフォローは俺がしてやるぜ」

「おチビちゃんにフォローが出来るのか怪しいものだね。頼るならオレを頼ってくれよ? アッキー」

「はい。レンくんのことは経験者として、頼りにしてますから」

「なんかグサッときたー。レンも朔夜もひどくね?」

「二人の手綱をしっかり握ってスタッフに迷惑かけないようにしてくださいね、朔夜」

「あはは、出来る限り頑張りますー」


彼らと一緒なら自分の力以上のものが出せるだろう。

生だから失敗すればそのまま放送にのっちゃうという不安は少なからずあるけれど、きっと大丈夫。











六月といえば、「お〜はやっほ〜!」ちゅう展開を構築はしてたんだけど、が、頑張って搾り出した結果がコレ……。あははは、もう笑うしかないね。

あの時の(どの?)罰ゲームのおかげで朔夜ちゃんは彼らの名前をスムーズに呼ぶことが出来るようになったんだよ、的な。

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