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□フュリーはキリエを使わない 前編
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タイトル 「フュリーはキリエを使わない」 前編

「キリエ・エレイソン!!」
そばにいた見知らぬプリーストがそう唱えると、その対象の周りには聖なるバリアーが張られた。
「ああ、いいなぁ。綺麗だなぁ・・・」
それを見ていた僕はうっとりとした目でつぶやいた。
僕は狩場でその光景を見るたびに、その聖なる光に見とれていた。
「なにぼけっとしてるのよレヴィン!ほら、さっさといくよ」
そうして他人に気を取られていた僕を、すぐにフュリーがとがめた。
僕の相方のフュリーはプリーストだ。
だが、決してフュリーが僕にキリエを使うことはなかった。
僕らはずっといっしょに狩りをしていたけど、僕が聖なる結界に包まれたことはただの一度もなかったのだ。
だから僕は、ずっとキリエに憧れていた。
いままでもフュリーにそれとなくキリエを求めたこともある。
「ねぇフュリー、キリエってすごいよね。あのバリアーがあれば僕も少しは硬くなるかもよ?」
でも、そんなこといってもフュリーの答えはいつも同じだった。
「そんなにバリアー好きならエナジーコートしとけば?」
エナジーコートするとすぐSP切れるからって、怒る癖に・・・。
ウィザードである僕はHPが低く、敵の攻撃を食らうとすぐに死んでしまう。
なのに相方のフュリーは危険な場所が好きで、狩りにいくときはいつも、油断すれば死んでしまうような危険なところばかりだった。
連日のように死んで床に転がる僕には、キリエを詠唱してくれるプリーストが天使のようにも見えていた。

この日も、僕はフュリーといっしょに狩りへ行って、いつものように床に転がっていた。
フュリーは慣れた様子で僕にリザレクションを詠唱し生き返らせると、何事もなかったように狩りの続きをはじめようとした。
死んだ僕にただの一言もかけないという、まるで僕の生死には全く興味の無いかのようなフュリーの態度に、さすがに僕は少し腹が立った。
僕が死んでも関係ないってことかよ。
そんなフュリーの態度に我慢しきれなくなって、僕はついフュリーに詰め寄った。
「フュリー、ちょっと待ってよ」
「何よ?荷物でも重いの?」
フュリーは面倒くさそうに、自分のかばんをこっちに差し出した。
「そうじゃなくて・・・なんでフュリーは僕にキリエを唱えてくれないのさ?」
フュリーはちらっとこっちを見て、そして面白くなさそうに目をそらした。
「だってレヴィンにキリエしたって無駄じゃない。
すぐ敵の攻撃くらって効果切れるしさ。
キリエのSPももったいないし。
どうせウィザードなんて死にやすいんだから、キリエなんてあってもなくてもいっしょでしょ?」
そのセリフを聞いて、僕は堪忍袋の尾が切れた。
「いっしょじゃないよ!キリエがあるだけで死ぬ回数が減るかもしれないんだよ?
レベルあがってきてデスペナルティがどれだけ痛いと思ってるんだよっ!
フュリーは死なないからいいかもしれないけど、僕にとってキリエがあるかないかでは大違いなんだよ!
そんなにキリエしたくないなら、僕はもう君とは狩りへ行かない!」
フュリーにそう言い捨てた後、狩りで入手したアイテムをその場に放り投げた。
そして僕はすぐに蝶の羽を使い街に戻った。


〜たぶん続く〜

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