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□僕の誓い
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「SGっ!」

彼女の手短い言葉に慌てて詠唱を重ねるけれど、真後ろに揺らめく影に僕の体は吹き飛ばされた。
「っごめ、飛んで」
地に伏した僕の言葉と同じくして、魔物に取り囲まれたプリーストは淡い光を空に放ち姿を消した。
しばらくして手の内のMAP上をちらちら動く緑の点に彼女の生存を確信し、安堵とそれに反する複雑な溜め息を漏らす。


遠く、彼女と行動を共にし始めた頃は僕が守るのだと思ってた。僕の後ろを歩く少女を魔物から守り引っ張って行くのだと……。
だのに、今は、10近くあったレベル差も消えて…僕は逆さに守られ助けられている。

ずっと僕の背を追っていた少女は もう いない。
実力と経験を身に着けた、僕の前を歩いて居る。

……なのに僕は、彼女の指示も巧くこなせずにいるばかり。

床の冷たさに視界を閉じて想う。

――もう…僕の手を、君は必要としていないのかも知れないな…。

溜め息が喉元まではい上がった時、鎧の擦れる音がした。
瞼を上げれば、魔物を引きずりつつも必死に蘇生を唱える緑髪のあの子の姿が…あった。

その姿に沸き上がった気弱な気持ちを嚥下する。
彼女を守り、彼女の手を引くことが僕の役割だと思って居たけれど、それは傲慢な勘違いなのだろう。
互いを守り、互いに差さえあう未来を誓って僕たちはここまで来たんだ。
――だから…同じ唇に乗せるなら弱音よりも君を守る言霊を紡ごう。


天使の祝福に似た穏やかな慈愛の光を受け、僕は膝を立てる。

「水の精霊よ、僕に力を…ストームガストっ!」
頬を汚す泥もぬぐわず、彼女を取り囲む魔物達の群れる中心へ、凍える嵐を浴びせる魔法を放つ。
君が僕を越え、僕の手を必要としなくとも、僕のかたわらを求めてくれるのならば……僕は君の手を取り、君の笑みを守りたい。

言の葉に魂を乗せ、言霊を紡いで行こう。
魔法を操る僕には、君を守れる強靭な肉体も強固な剣も無いけれど、言葉に力を乗せれるんだから。



僕を守護する精霊で君を……。


END。

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