self-righteousness

□星ヲ掻キ集メテ…見エタ真実
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rain candy




「ねぇ、さっきから何舐めてんの?」


「飴ちゃん」


それは分かる。なんて云うコイツに舌を出す。

そこにはピンク色の飴玉が乗っている。
ボクの好きな苺味キャンディーだ。


「何?リンゴ?トマト?」


オイ……お前わざとだろ。
リンゴ味でピンク色って、どんだけ着色料駆使してますって主張したいんだよ!
それにトマト味って!
そんなん舐めるくらいなら、実物噛るわ!!

なんてツッコミは心の中でだけ吐き出して。


「いちごぉ」


右側にあったのを、左の頬に移動させた。
動かすたびに、大きな飴玉がコリコリ音を起てる。


「ねー。なんで人間って雨みたいじゃないんかな?」


「………何?お前舐められたいの?」


ぼーっと窓の外を眺めて、急に頭を過った想いを口に出してみた。

訝しげな表情で、コイツはボクを覗き込む。


「や、飴ちゃんじゃなくて雨」


指差した窓へと視線を移して。
窓の外は、冷たい雨が降っている。

今日は、雨音で目が覚めた。


「雨ね。で?なんでそー思うわけ?」


んーっと考える素振りをしてみる。
まだ雨は降り続きそうだ。


「雨ってさ、空から降ってきて、地面に落ちてさ。晴れたら忘れさられんの。」


口中の飴玉を音を起てて噛み砕いた。


「誰も気にしないし、その雨の行方とか結末とか、どーでもいいの。目に映らなくなったら存在しなくなんの。」


淡々と想った事を声にしていく。
そこまで言い終わると、コイツは頭を優しく撫でてきた。


「それでオマエは何で雨になりたいって?」


別になりたくなんかない。と呟いた。

奴の手から逃れて、テーブルの上の新しいキャンディーに手を伸ばす。




……ただ、誰にも迷惑掛けずに消えれるなんて、羨ましいと想っただけ。

姿を消すと云う行為に、どんな不具合も感情も生じさせないでいられるなら

たぶんボクは……





「オマエは無理だよ。雨にはなれない。」


封の切られた袋から散らかったキャンディーを綺麗につめ直し、そのうちの1つを口に放り込んだコイツ。


「そんな簡単に存在した証は消えない」


だろーね。


だから、馬鹿みたいに悲しいんだろう。




君のいなくなった世界は


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