短文


□I wanna be with you
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けーすけさんハッピーバースデー♪

R-18につき、閲覧注意ねがいます!




「I Wanna Be With You」

(1)

時計の秒針がかちかち時を刻む音が、やたら大きく聞こえる。
すっかり冷めてしまった夕食にラップをかけながら、俺は大きくため息をついた。
勝呂は今日も、帰りが遅いらしい。

結婚したって言っても、知っているのはごく身内か、上司だけ。
仕事上、名字も変えてない。
祓魔師に定時帰宅なんてものはないにせよ、普通は家族がいたら早く帰ってくるもんなんじゃねえの?
最近の勝呂はすごく忙しそうで、帰宅が深夜をまわるなんてザラ……帰ってきても、すぐに寝てしまう。
せっかく一緒に住んでいるのに、ここ数日はろくに話もできてない。

「俺も、任務増やしてもらうかなあ……」

テーブルにつっぷして、独り言をつぶやく。
しんとした部屋に、自分の言葉だけがころころと転がっていく。さびしい。
うちにいても一人なら、いっそ忙しい方が気がまぎれるかもしれない。
学生だった頃の方が、勝呂と二人の時間は少なかったけど、そのぶん会える時間を大事にしていた。

左手を眺めると、勝呂がくれた約束が光っている。
それ以上の贅沢なんて言っちゃだめだと思うのに、心は正直にさびしい、一人でいたくない、と訴える。
勝呂が頑張ってるのに、わがままだよな、俺。
薬指の指輪をそっとなぞると、もう一度ため息が出た。


ざああああ、という水音がして、意識が浮上した。
考え事をしているうち、いつの間にかそのまま寝てしまっていたらしい。慌てて起き上がると、毛布がぱさりと肩から滑り落ちた。
勝呂がかけてくれたんだろうなと、ちょっと嬉しくなった。軽く畳んだ毛布を椅子にかけると、音が聞こえる風呂場へ向かった。

「勝呂?」
「なんや、起きたんか」

ひょい、と覗き込むと、浴槽に湯を張っているのを待っているらしい勝呂が、コートだけ脱いだ姿で立っていた。
心なしか疲れた様子で、勝呂が髪を結んだゴムをほどく。前髪がぱさりと額にかかる。
勝呂の素の姿が見える気がして、俺はその仕草が好きだ。

「帰ったんなら、起こせよ」
「あー、よう寝とったから、後で運んだろうと思とって。遅うまで待っててくれて悪かった……奥村は?夕飯食ったんか?」
「……うん。勝呂は?先に風呂?」
「せやな。汗流したいねん。後で一人で食べるから、先寝とき」

まだ食べてないって言ったら、勝呂が気を使うような気がしたので小さな嘘をついた。
勝呂が食べてる間、一緒にいたいなと思ったけど、寝てろと言われて言えなくなる。
きっと俺のことを思って言ってくれてるんだとは思うけど。
勝呂の気遣いが分からないわけじゃない。でも、なんだか切ない。

湯を確認した勝呂が、服を脱ごうとして、まだその場を動かない俺を不審そうに見る。

「なんや?」
「あ、あのさっ!俺も風呂まだだから、一緒に入ろーぜ!」

なるべくさり気なーく、言ってみた。
勝呂に余計な時間を使わせるのは悪いから、それなら大丈夫かと思って。
だけど、すごい勢いで振り向かれて、俺はびっくりしてしまった。

「は!?一緒に?」
「え?だ、だめ?」
「いや、だめとは言わんけど……」
「じゃ、いーんだな!」

勝呂の気が変わらないうちに、とさっさと服を脱いで、脱衣かごに放り込むと、俺は先に浴室のドアをくぐった。
シャワーを流して空気を温めていると、勝呂もすぐ後から入ってくる。
何気なくそちらを見て、俺の心臓が勢いよく跳ねてしまった。
勝呂の裸なんて見慣れてるはずだったけど、いつも抱き合うときは、部屋の明かりを落とす。
明るいところで見る勝呂にどきどきして、俺は急に恥ずかしくなってしまって視線をそらした。
勝呂や雪男に、しょっちゅう「考えてから動け」って言われるのがよーーーく分かった。
恥ずかしいのをごまかすように、「勝呂座れよ!」って、バスチェアを勧めて勝呂の後ろに回る。
やばい。
頬が熱いのは、風呂の熱気のせいじゃないのは確実だった。

「自分から一緒に入るて言うて、なに照れとんねん」
「てっ…照れてなんかねえよ!」

思わず言い返してしまった俺に、はは、と勝呂は笑った。
て、照れないわけねえだろ……っ!
どうしよう。
心臓がばくばく、破裂しそうだ。

「どうした?」

無言になった俺を不思議に思ったのか、振り向こうとした勝呂を止めて、ボディシャンプーを手に取る。
勝呂の後ろに膝立ちになると、手にソープを数回プッシュして、泡立てた。
一瞬どうしようかな、と思ったけど、スポンジは出さずに両手でそのまま、勝呂の背中を擦る。すると、驚いたように、

「はっ?手でやんのかいっ」

勝呂のツッコミを無視して、肩から二の腕へ、するすると両手を使って洗って行く。手の平はマッサージするみたいに、強めに揉んでみる。
銃を扱う指先は、固くたこができてる。無骨に見えるその指が、自分に触れる時にはすごく繊細に触れてくるのを思い出して、なんだか変な気分になってきた。

「気持ちよくね?」
「あ、まあな…でもこんなん、風呂上がってからでもええやろ」
「んー……じゃ、これは?」

勝呂の背中にぺたりと胸を密着させたら、面白いくらいびくっとした。それに気をよくした俺は、そのまま肌を滑らせてやった。

「おい!?何して……」
「背中、流してやるっ」

勝呂が焦ったような声をあげたけど、無視して泡だらけの背中に身体をこすりつけた。
肩に手をおいて、上下にゆっくり動くと、ぬるぬると身体が滑る。
自分の胸と腹をぴったりくっつけてたら、刺激で胸の突起が硬くなってきてしまった。勝呂がそれに気づかないはずがなくて、急にくるりとこちらを向いた。
多分、俺の顔、真っ赤になってる。恥ずかしいことした自覚はあった。

「何や……誘っとんのか?」
「ん、うん……」
「こんなん、どこで覚えてくんねん……」

呆れたような声に、勝呂の顔をまともに見られなくてうつむくと、ちゅっと音がして、額に柔らかい感触がした。
てっきり怒られると思ってたから、ぽかんとしてしまう。

「え、えーと……」
「続きはせえへんのか?」
「でも、勝呂疲れてんじゃねえの……?」
「あんなお誘いされて、疲れてるもなにもあるかい」

わざとらしくにや、と笑う勝呂のモノがそそり立っているのを見て、思わずこくりと喉がなった。


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