短文


□Just married! 2
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just married!! 2


卒業を間近に控えたある日。
祓魔塾の卒業を祝う謝恩会をやるというので、同期生が集まることになった。
皆それぞれ祓魔師になり、正十字学園を出た後は所属がばらばらになる。
すでに任務をこなしていることもあり、授業以外で全員がそろうのはこれが最後かもしれない。

長いようで早かった三年間。

これからそれぞれの所属部署で働く自分達は、もう滅多に会うことはないだろうけど、同じ時を過ごした仲間には、ただの同級生とも違う、特別な絆ができていた。


「やべー!もう始まってるかな」

俺はばたばたと廊下を駆けていた。
さっきまでの任務が長引いてしまって、集合時間に間に合いそうになかった。
いつもの教室にたどり着くと、しえみがドアの前に立っていて、なんだか華やかな花束を抱えている。
俺を見つけると、ぱっと微笑んだ。

「あれ、何してんのしえみ…」
「燐を待ってたんだよ!」
「わざわざ?先に入ってりゃいいのに」
「いいからいいから!ハイ、これ」

そういうと、もっていた花を俺に押し付けてくるので面食らった。

「しえみが持ってろよ」
「だめだめ!これは燐が持ってなきゃ、意味ないんだから」

はあ?
なんだかよく分からなかったけど、勢いに負けて受け取ってしまう。
しえみはにこにこと、満面の笑みを浮かべているだけだ。

「どうすりゃいいんだ?部屋に飾るのか?」
「ううん、これは燐のために持ってきたの。さっ、みんな待ってるよ!」

俺のため?なんだよそれ、と彼女に尋ねる前に、しえみは教室へと繋がるドアを開けた。


ドアが開いた瞬間。

ぱん、ぱんぱーーん!!
すごい破裂音がして、俺はとっさにしえみを背後に隠して飛びずさった。
反射的にクリカラに手をかけようとして、そして……。

な、何だあ!?

目の前には、塾の面々が勢ぞろいしていた。
教室は、カラフルなリボンや花で飾り付けられて、いつもと少し雰囲気が違う。
さっきの音は、クラッカーだったみたいで、辺りには紙テープが散乱し、火薬のにおいがかすかにしていた。
ぽかんと口をあけて、何がなんだか分からない俺の背中を、しえみが押す。

「やっと主役の登場やね〜」

志摩がにこにこしながら手を引っ張ってきて、ふたりに挟まれる形で、俺は部屋の中に通された。

「え、なになに?」

状況がつかめなくておろおろしていた俺は、正面に立っている人物をみて、今度こそ固まった。

明陀の法衣を纏った勝呂だった。

「勝呂、かっけえな!」

思わず言ってしまったら、勝呂は「当然やろ」と澄ましている。

「ていうか、何でそんなカッコしてんだ?」
「結婚式やからな。正装や」
「へー。結婚……し、き?だ、だれの!?」

一瞬聞き流しそうになった単語に驚いていたら、横から出雲としえみが言った。

「誰のって、あんたたちのでしょ!」
「燐、今から二人の結婚式するんだよ」

俺は唖然とした。皆にこにこ…いや、にやにや?してて、冗談なんだか本気なんだか分からない。

「奥村くんには黙っとったけど、サプライズで計画してましてん」
「ささ、坊の横に並んで並んで」

あれよあれよと言う間に、俺は勝呂の隣に。
花の飾られた教卓には雪男が立っていて、訳が分からないでいる俺に苦笑してみせた。

「一応僕が神父さんの代わりね」
「え、ほんとにやんの……?」

横に立つ勝呂を見上げたら、にんまり笑われた。
知らなかったの、俺だけかよ。
て言うか、めちゃめちゃ恥ずかしいんだけど!
俺はしえみに手渡された花束に目を落とした。

「なんでこんなこと……」
「ええやろ。せっかくやから、皆にも祝ってもらおと思てな」
「はあ……」
「教会やら寺やらで式は挙げられんけど、ここにいる皆が証人や」

じわじわと、顔に熱が集まってくる。
こんな馬鹿馬鹿しいこと、って思うけど……けど……。

「それではそろそろ始めましょうか。兄さん?大丈夫?」

雪男に確認されたけど、そちらを見ることができなかった。
一体どんな顔すりゃいいってんだ!

俺がパニくってるのに気がついたのか、勝呂がそっと俺の手を握ってきた。
皆の前なのに。てか、結婚式とか言ってる時点で今更か。
情けないけど、ちょっと落ち着いた。
すると俺達が手を繋いだのを了解ととったのか、雪男が静かに促した。

「では勝呂くん、誓いの言葉をお願いします」
「…はい」
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