過去拍手

□いたずら
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なんとなく同棲勝燐


***

珍しい。

飯ができたぞー、って呼んだのに、返事がない。
あれ?っと思って部屋に行くと、勝呂は机につっぷして眠ってた。あいかわらず、眉間にしわが寄っている。
机の上には、俺にはなんだかよくわからないむずかしそーな本と、いつも飲んでる鎮痛剤の箱が転がっていた。
頭痛ぇなら、無理しないで寝ればいいのに。
自分のことは自分が一番わかってる、なんて言って、俺の言うことなんて聞きゃあしない。
どうしよっかな。
夕飯、冷めちまうけど……でも、疲れてるなら起こすのも、なあ。
迷って勝呂の顔見たら、むにむに口が動いた。なんか可愛い。
考えてみたら、あんまり勝呂の寝顔って見たことないよな。
朝はたいてい俺より先に起きてジョギング行ってるし、夜だって俺が寝てもまだ本を読んでたりしてる。
どんだけ勉強好きなんだっつう話だよ。
もう一つの椅子をずるずると引き寄せて、勝呂の顔が見えるように背もたれを抱えて座った。起きるまで…とは言わないけど、もうちょっと寝顔を見ていたくなったから。
見つかったら怒られっかな。
すうすうと呼吸音が漏れるたびに、勝呂の背中がおだやかに上下する。
出会った頃より、少しだけ大きくなった背中。
いつもいつも、勉強と努力を怠らない勝呂の、まっすぐ伸びた背筋が好きだ。いつだって前をみて、なんでもやればできる、って信じてて。
そんなとこに、俺はいつも救われてた。そして、今も。

そーっと指を伸ばして、眉間のしわを伸ばすようにさすってみた。起きるかな?と思ったけど、まだ起きない。
だんだん調子に乗ってきて、今度はほっぺたをちょん、とつついてみる。
こんなに無防備で、こいつ大丈夫か?なんて余計な心配したりして。
額がぶつかるくらい近くで覗き込んだら、急にぱちりと勝呂の目が開いた。
「おわっ!」
びっくりしてのけぞってしまった俺を、勝呂の手がつかまえる。油断してたから、心臓がどきどき言ってる。
「……お前、何しとるん……」
あきれたように言われて、むっとした。
「飯、できたから呼びに来たんだけど」
「あー……おおきに。ちょお寝とったみたいやわ」
うん、と伸びをすると、勝呂は俺を見てにやっと笑った。
「なんや、キスしそこねたんか?」
「はあ?!何言ってんの?しねーよ!」
「へえ」
真面目な顔してなんや違うんか、残念、なんて言う。
「俺はほんとに、起こそうとしただけだからな……っ!」
「はいはい」
「す、勝呂がぐーすか寝てっから、飯冷めちゃうだろっ」
「そら堪忍や」
なーんだよそのあしらい方は。
まるで俺のが言い訳みたいじゃん。ほんとに、キスなんかしてねえのにっ。
椅子から立ち上がって部屋を出ようとする勝呂をからかうつもりで、俺はやり返した。
「んなこと言って、勝呂の方こそ俺が寝てる間にキスなんかしちゃってんだろ?」
「しとるで」
……はあっ!?
そんな訳ないと否定されると思っていたのに、勝呂にこともなげに言われて、俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまう。
「え……ほんとに?」
すると勝呂は不思議そうに首を傾げた。
「今更何言うとんねん。いやなん?」
「い、いやとかじゃなくてだな……っ!ね、寝てる間とか、反則だろっ」
「なんやねん反則て」
勝呂がくくく、と笑う。
「奥村の寝顔みとったら、いたずらしたなんねん。何しても起きへんし」
「はあ!?」
そりゃまあ、一緒に暮らしててそういう関係なわけだし、キスのひとつやふたつ、今更構わねえけどさ。何してもって、何してんだよ?
それ以上はあんまり考えない方がいい気がする。

だけど「早く飯行くぞ!」って勝呂を追い立てようとしたら、やんわり腕をつかまえられた。近づく気配にあ、と思ってぎゅっと目をつぶってしまったら、やっぱり唇にやわらかい感触。
かすめるみたいなキスをされた。
おそるおそる目を開くと、勝呂の顔がまだ近くにあって、不覚にもどきどきしてしまう。
「今は起きとるから、反則ちゃうやろ?」
「う……」
さっきの俺の言葉尻をとらえて言う勝呂をにらんでやったけど、もう一回されたキスは優しくて、結局俺はそれを許してしまった。
あーあ。なにしてんだろ、俺。
「勝呂、頭痛は?」
「あー、さっきちょっと寝たからようなったみたいや」
「んじゃとっとと飯!」
食うたら続きしてええ?なんて言いやがるから、俺は勝呂の腕を思いっきりつねってやった。
起こしたら悪いな、なんて思った俺の心遣いを返しやがれ!


***




なんかよくわからん小話ですみません。

寝てる相手にキスって、起こしそうでどきどきしながらしてたらかわいいな。
でも勝呂は寝てる燐にちゅーしまくりでもちっとも起きないから、ちょっとつまんないと思っている(笑)。
そんな勝燐どうでしょう。

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