過去拍手

□猫の日
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2/22猫の日だったので。





―――奥村くん、明日は何の日だかご存知ですか?

正十字騎士團日本支部長兼正十字学園理事長兼奥村兄弟の後見人、であるメフィストフェレスが、いつものニヤニヤ笑いを貼り付けた顔で尋ねたのは昨日のことだった。


「ぶわーっはっはっ!なんですのん奥村くん、それっ!!」

出会い頭に志摩に爆笑された。
うっせえな、変なのは分かってんだよ!分かってんだけどムカつく。

「なんかよくわかんね〜けど、今日一日このカッコしてたら、一万円のボーナスなんだよ!」

月二千円で暮らしている俺に、一万は大きい。
と言う訳で、悪魔の提案にうかうかと乗った俺の頭には、

「猫耳なんて反則やわ〜!!」

と志摩に叫ばれたそのもの、いつもの耳の代わりに、真っ黒い動物の耳が頭にくっついていた。
さすがメフィスト、リアルな猫耳だ。ちなみに聞こえ方は普段と変わらないい。
今朝鏡で確認してみたら、毛並みもつやつやで、髪にも溶け込んでいる。
俺にこんなカッコさせて、何が楽しいんだか。
と思ってたら、子猫丸がうずうずしてた。

「触ってみてもええですか?」
「いいけど」
「ちょっと……!アンタ、なにそれ!!」

今度は出雲に捉まった。
塾の皆には当然、今の俺の耳はばっちり見えているに違いない。
出雲も、何故か顔を真っ赤にして、すごい目つきでにらんでくる。あまりの迫力に思わず後じさってしまった。

「な、なにそれって……い、色々あってだなー」
「尻尾だけじゃ飽き足らず、耳ですって!?アンタ一体誰をたぶらかしたいのっ?」
「たぶら……?いや、これは小遣いのためなんだ、仕方ねえんだ」

出雲と一緒にいた朴さんが、きらきらした目で俺を見つめてきた。

「ね、猫耳だね!触ってもいい?」

断る理由もないのでうなずくと、初めはおそるおそる、でも次第に大胆にさわさわと撫でてきた。
なんかちょっと、恥ずかしいな……。
意識的にじゃないけど、耳がぴるぴる動いてしまう。

「ねえちょっとふわふわだよ〜!出雲ちゃんも触らせてもらったら?」
「え、だ、だめよ、私は……!」

出雲はあいかわらずすごいガンつけてくるな。

「なんかくすぐってえから、もういいかな?」

聞いた途端、血相を変えた勝呂に連れ出されてしまった。


人気のない校舎裏に引っ張り込まれると、勝呂はあたりをきょろきょろと確かめると、

「こんのどアホっ!何考えとんねや‼」
「大丈夫だって!悪魔が見えない人には、この耳も見えないらしいから」
「そういう問題ちゃうわ!!そんなカッコでうろうろすんなっちゅうとんねん!」

勝呂が顔を真っ赤にして怒ってるのを見てたら、なんだか悲しくなってきた。
自分でもみっともないって分かってるけど、でも、そんな怒んなくてもいーじゃねえか。

「へっ?なんで?そんなみっともないか?」
「みっ……そら、みっともないわ!」
「俺だって、こんななるとは思ってなかったよ!」

くっそ、元はと言えば俺が浅はかなせいだけど……!俺は早くも金と引き換えにのんだ条件を後悔し始めていたが、今日一日の我慢なんだから!
これ以上口論しても耳は元に戻らないし、勝呂を押しのけて出て行こうとした。

「おい、どこ行くねん」
「授業に決まってんだろ!」
「せやからそんなカッコで行くなって!」
「うっせぇうっせえ〜!!俺がどんなカッコしようが、俺の勝手だろっ!勝呂には関係ない!」
「関係ないことあるか!お前のそんな姿、他の誰にも見せとうない、言うとんねや!」

へっ?

……一瞬なんていわれたのか分らなくて、勝呂を見た。
やっぱり顔が赤い。耳まで赤い。
これは、あれか。怒ってるんじゃなくて。

「何、勝呂照れてんの?」
「お、お前なあ……!今、自分がどんな姿なんかわかっとらんみたいやけど、すごい破壊力やで」
「は、破壊力??」

耳が何を壊すんだよ。意味わかんね。
でもそう言おうとした俺は、次の瞬間勝呂にぎゅうぎゅう抱きしめらていて、なんだかどうでもよくなってしまったのだった。
耳元で「可愛いらしすぎんねん!!」と言われて、
つられて俺までなんだか恥ずかしくなってきた。



オチない。
今日は2月22日、ねこにゃんにゃんの日!


続きは裏に。

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