過去拍手
□おにごっこ
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「待てゴルアアアーーー!」
学校中に響きそうな大声を上げて、鬼が追っかけてくる。
真っ赤な顔で、まさしく鬼の形相なのは勝呂。追い掛けてくるけど、待てと言われて待つバカはいない。
「こっち来んなバカー!!」
俺は全力で逃げた。
はあ、はあ、はあ、はあ。
勝呂をまいたつもりで油断していたら、にゅっと伸びてきた手に尻尾を掴まれ、俺はとうとう捕まってしまった。
しばらくはお互い息が上がって、はあはあ荒い呼吸音だけが聞こえている。
「…っ、なんで、逃げ、んねんっ!」
「す、勝呂が、追っかけて、くるからだよっ」
「の、どあほっ!」
勝呂が尻尾から手を離してくれないから、俺はふにゃふにゃになって体に力が入らない。
しばらくしてやっと息が整ったのか、大声で怒鳴られた。
「俺の話も、ちゃんと聞けえっ!」
いやだいやだいやだ。絶対いやだ。
「聞きたくない!」
「お前はなんでいつもそうやねん!勝手に考えて、突っ走って、」
「そうだよ!俺は勝手なんだよ!」
勝呂が好きだ。
友人としてではなく。
だけど絶対叶わない想いだって知ってる。
だから俺は、勝呂に向かって「お前のことが好きだ」って言ってしまってから、返事も聞かずに逃げ出したんだ。
拒否の言葉を聞きたくなかったから。
嫌われる理由なんていくらでもある。
「お前は魔神の子で、寺のみんなの仇や」
ぐさり、と来た。分かっていても、勝呂に直接言われたらやっぱりキツい。
嫌われても、好きでいることくらいは許して欲しい。なのに。
わざわざ、止めをさすために追い掛けてきたの?
「だから聞きたくなかったのにっ」
「せやけどな」
逃げようともがく俺にしびれを切らしたのか、勝呂はいきなり、息が止まりそうなくらい俺を抱きしめた。
視界が勝呂のシャツでいっぱいになる。
「奥村は奥村や」
「……!」
「お前が悪魔やろうが人間やろうが、関係ない!俺もお前のこと」
信じられない言葉を耳にして、俺は目を見開いた。
うるさいくらい轟く心臓の音は、さっきまで走っていたせいだ。
絶対そのせいだ。
end.
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このころから、私の書く燐はうじうじしてます。
20111231