過去拍手

□Trick or treat!
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トリック オア トリート!




コンコン、と窓を叩く音に顔を上げると、奥村の顔が見えてギョッとする。

時は真夜中、誰も見ていないとはいえ、寮の窓に張り付いている姿が他人に見つかったら、不審者もいいところ。
慌てて窓を開けると、奥村はにんまりした顔で

お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!

と言い放った。


「…は?」

このアホはまた何なんや。

「あほなこと言っとらんと、入るんか入らんのかどっちや」
「えーなんだよーノリ悪いやつだな!」
「……」

無言でとっとと窓を閉めようとしたら、わー待って待って、と焦って言いながら、窓の桟を乗り越えて部屋に侵入してくる。


「…で?こんな夜中に何の用や」

仁王立ちのまま聞くと、奥村はほっぺたをぷくり、と膨らませる。

「ハロウィンだよー。知らねえの?」
「いや、まあ知っとるけど…おばけカボチャ飾るやつやろ」
「そ!」

子どもの頃、雪男とお菓子もらいに回ったの思い出してさー。

きらっきらの目で語りだすから、不覚にもかわいいと思ってしまった。

「悪いけど、俺は仏教徒なんで、そんな祭り関係ないわ」
「ええッ!そうなんだ!?やったことない?」
「ない」

そっかー、としょぼくれる奥村を見てふと思う。。
…そういえば、奥村の子どもの頃って、どんなんやったんやろ。

「そんなに、楽しいもんなんか?」
「おう!なんてったって、いたずらしても怒られない日だしな!
 雪男と二人で、ジジイに…」
「ジジイ?」
「あ、いや、父さんに」

奥村は、何故か急に静かになった。

「どうした?」
「なんでもない。…なあ勝呂、お菓子持ってる?」
「お菓子い?…持ってへんなあ」

急に話が変わって面食らった。
だけど、なんとなくさっきの話には触れられたくないようだったので、知らないふりで答えると、奥村がにやりと笑った。

「じゃ、いたずらするぞ!」

突然だったので避けられなかった。
急に抱きついてきた奥村の唇が、俺のにくっついて、すぐに離れた。

唖然としていると、

「じゃあな!」

来た時と同じように唐突に元の窓から、奥村は出て行ってしまった。
あまりのことに、声も出ない。

何やねん、あれ。
いたずらって、いたずらって、…ええええ?

「いったい何やったんや…」

柔らかい唇の感触と疑問だけが、残された。





ハロウィン書きたい!と思い立って急いで書いたので、掲載期間4日間でした。
ちゅーする燐が書きたかったらしい…です。
20111231

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