リクエスト文

□下心ですがかまいませんか?
1ページ/4ページ

サンボ様リク

下心ですがかまいませんか?(1)


生まれて初めて、告白した。
相手は同級生で、最初はただ生意気で、言動がめちゃくちゃで、いらいらするだけの相手だったけど。
いつの頃からか、目が離せなくなっていて。
これが恋なのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

家族以外の誰かを大切だと想うのは初めてで、どうすればいいのかなんてさっぱり分からない。
回りくどい言い方も出来ずに、ストレートに告げた。

「奥村、俺はお前のことが好きみたいや。」

勝呂竜士16歳。
一世一代の告白。

……の、はずだった。


言われた方の燐は、しばらくきょとんとした顔で勝呂を見つめていたが、やがて嬉しそうに微笑むと、

「俺も!俺も勝呂の事好きだ!」


可愛らしい顔で、勝呂をじっと見つめて言ってくれたので、勝呂はすっかり舞い上がってしまった。
その時確認しておけばよかったのだ。
燐の言う「好き」が、一体どういう意味なのかを。
しかしその時の勝呂は、自分で考えていたより緊張していたのだろう。
ただ想いが通じたことの嬉しさでいっぱいで、そんなことまで頭が回ることはなかった。


その結果が今だ。

尻尾をゆらゆらさせながら、志摩と何やらいかがわしい雑誌を覗き込み、すげー!とか、これどうなってんの?などと声を上げている。

どうやら燐は、勝呂の言った「好き」の意味を、違う意味に捉えたらしい。
放課後に燐を自分の部屋に誘えば、志摩や子猫丸も当たり前のように頭数に入っている。
二人がいなければ、自分から呼びに行ってしまうほどで、勝呂にはそれがもどかしくて堪らない。

――まあ、同じ男から好きと言われて、そういう意味に思えないのは仕方のないことかもしれない。
自分は燐のことをかわいらしいと思っているが、性格ははっきりいって男前、竹をばっさり割ったような男なのだ。

幼少期の話を聞く限りでは、どうやらこんな風に友達といる機会はなかったようだし、楽しくてたまらないといった表情をしている燐の顔を見ると、何も言えなくなる勝呂なのだった。
とは言え、勝呂にしてみればこの宙に浮いた自分の気持ちをどう扱うべきなのか、悩ましいのが現状だ。
燐が自分のことをただの友人としてしか見ていなくても、勝呂の方はそうはいかない。
今だって、燐が何気なく掴んだ自分の腕を、痛いほど意識してしまっている。
勝呂の方が燐より少し背が高いため、燐が勝呂の方を見ると、自然と上目遣いになる。
そんなことにいちいち心臓が跳ねてしまうのが悔しい。
勝呂は燐の肩を引き寄せた。
こてんと燐の頭が、勝呂の肩にもたれる格好になる。

「どしたあ?勝呂」
「いや、どうもせんけど」
「変なやつだな〜。あ、一緒に見たい?」
「……ええわ」

何だよマジメだなあ、とケラケラ笑う燐は、こちらの考えていることなど
全く分かっていないだろう。
勝呂も燐も健全な男子高校生で、女の子に興味があるのは自然なことだ。
勝呂さえ、燐を特別な意味で気にかけていなければ。
紙面には色とりどりの衣装を纏った少女たちがこちらに微笑みかけている。
しかし今の勝呂には、燐の方がよっぽど可愛く見えてしまう。

志摩が気の毒そうに自分の方を見ているのが分かって、勝呂は憮然とした。


時間になり、一人で旧寮に帰ると言う燐を、半ば無理矢理説得して一緒に歩き出す。

「女の子じゃねえし、一人で平気なのに」
「俺が平気ちゃうねん。ええから行くぞ」
「はいよー。志摩、子猫丸、また明日なー!」

ニコニコと手を振る燐の背中を押して、外に出る。
幼馴染二人の生暖かい視線が痛い。
志摩が声を出さずに口パクで「坊、頑張ってくださいね〜!」と言うのが分かって、げんなりする。
燐以外には、勝呂の気持ちは筒抜けなのに。肝心の、一番伝えたい相手にはどうやったら分かってもらえるのか。
一度はっきり告げただけに、それ以上どうしたらよいものか皆目見当もつかない勝呂なのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ