リクエスト文
□恋愛中毒
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りん様リク
恋愛中毒(1)
夕暮れは何故かさみしい気持ちにさせる。
まだ小さな子どもだった頃から、燐には自分が異分子だと言う自覚があった。
明るい昼間はいい。他人にどう思われようと、俺には無関係だと自分に言い聞かせれば済んだから。
修道院に帰ると、温かく柔らかな光の中で皆笑っている。大好きで安心できる場所だけれど、どうしても燐一人だけ、何かが違う。
燐にとっての家族の中にいてさえ、感じる孤独。それが哀しかった。
その理由がずっと分からないまま生きてきて、まさか自分が人間じゃなかったからだなんて。
それを知った時、あの温かな光は望んでも手に入らないものなんだと悟った。
大事な家族が目の前から消えたからだ。それも自分のせいで。
いくら焦がれても、燐にはそれを得られる資格がない。
それなのに、燐はまた性懲りもなく、望みを抱いてしまった。
真っ直ぐで眩しい、ちょっとだけ優しい。
そんな人に恋をした。
自分にないものを求めるのは、本能みたいなものなんだろう。足りないから欲しくなるのだ。
手をのばしても届かないと思っていたのに、優しい手は燐を拒まなかった。受け入れて、好きだと言ってくれた。
どれだけ嬉しかったか、分かるだろうか。
――それだけで十分しあわせだったはずなのに、俺は。
ゆっくり歩いても、学校から寮にはすぐ着いてしまう。
暗くなって人に見えなくなったら、勝呂が手を握って歩いてくれる。
いつもひんやりしてる手のひらが、やがてほんの少し汗ばんで来て、手と手が吸い付くみたいに感じる。
離れ難くて、「じゃあまた明日な」「うん」って言ってからも離せない。
勝呂が困ったみたいに笑う。
「もう行かな」
「うん」
「奥村」
ほんまは俺かて、もっと一緒におりたいんやで。
嬉しい言葉と共に、額にキスしてくれた。
それでもじっと見つめていたら、唇にも。
とてもそんな風に見えなかったけど、勝呂は燐を甘やかすのが上手い。
おかげで燐は、自分がどんどんダメになっていく自覚があった。
一人で平気だった燐はもういなくて、勝呂がいなかった時、どうやって過ごしていたのか分からないくらい。
依存するのはよくないとは分かっている。
勝呂とこうしていられるのも、今だけだと知っているから。
だってこいつには、帰らないといけない場所がある。
そこに俺がいていい訳がない。
頭では分かっているのに、どんどん深みにはまっていく自分がいた。
優しくされればされるほど、もっと勝呂が欲しくてたまらなくなる。
燐の汚い欲望なんて知らない勝呂は、なだめるみたいにもう一度、キスをしてから離れていった。
「また明日」
「また明日」
その明日が絶対来るなんて、誰にも分からないのに。